なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その5)

 中国の工場に発注する食品の売買取引を行っていた買い主が、売り主との取引を一方的に解約して、中国の工場と直接取引を開始した事案について、信義則上の配慮義務違反による損害賠償責任が認められた事例。
 東京地裁平成19.11.26判例時報2009号106頁
(コメント)
 買い主は松屋。商品は冷凍豚肉スライスとか冷凍カレーベース、つくねハンバーグなど。読むうちにおなかがすいてきて松屋吉野家に行きたくなってきます。
 同判決は、売り主と買い主の取引は、いわゆる継続的取引契約そのものには該当しないとしながらも、売り主(原告)が買い主(被告)に依存している関係にあったこと、原告が契約の継続を期待していたことを被告も知っていたことなどの事情のもとでは、4ヶ月程度の猶予期間をおくべき義務があったと判示しています。そのうえで、1ヶ月100万円の損害を認めて、4ヶ月分400万円の損害賠償を認めています。
 原告の言い分にある程度の配慮は示しているものの、400万円の賠償だけしか認めないというのは厳しすぎます・・。
 いずれにしても、このような契約を使用という場合には、直接取引をしないことなどの契約条項を置いておくことが不可欠です。
 とはいえ大企業相手にそうした条項を置くというやりとりは大変そうですけど。
(追記)
 損害の算定については、次のように述べています。
 取引が続いていた38ヶ月間の1ヶ月平均の売り上げが4920万円あまりになるところ、取引打ち切り時の口銭料率が3%なので、これを掛け合わせて1ヶ月あたりの利益を143万円程度と推計。毎月の売り上げに変動が大きいことや粗利であることを総合して、1ヶ月100万円の限度で認めるとしています。