「知子の情報」をご存知ですか?
「知子の情報」などというと、ストーカーよばわりされそうでちょっと怖いです。実は、「知子の情報」というのは、テグレット技術開発という会社が作っていたデータベースソフトの名前です。この会社は、大変ユーモラスなところがあって、「章子の書斎」とか「直子の代筆」とか女性の名前をつけたソフトをいくつも開発していました。「美穂の旅」もそのひとつですね。
ある人のツイートに「美穂の旅」のことが思いがけず登場して、突然、そのころのことを思い出して涙が落ちそうになりました。
「知子の情報」というのは、それこそMS-DOSの時代から存在する「文書型データベース」といわれるソフトです。いまでいうと、evernoteみたいなものでしょう。クラウドとは無縁の閉じたコンピュータの中での話ですが。要するに、文書でもテキストファイルでも、場合によってはバイナリファイルでも、なんでも放り込んでおける。全文検索もできるけど、索引をつけておけば超高速に検索できる。それがウリのソフトでした。修習生のころから弁護士になってしばらくの間は、もっぱらこのソフトを使って起案し、成果物をテキストに戻してこのソフトに蓄積したり、業務日誌的なものをつけたりと、それはそれでフル活用していたものでした。
時は移り、MS-DOSがすっかり忘れ去られ、Windowsが95とか98になったころ、知子の情報も当然、Windowsに対応するようになりました。しかし、旧態依然としたインターフェイスが流行らなかったのか、「知子の情報」も次第にメジャーな存在ではなくなり(というかもともと、『知る人ぞ知る』的なマニアックなソフトウェアでした)、いつしかぼく自身も使わなくなりました。
でも、当時のデータは、MOディスクのどこかに残っているはずだし、Windows版の知子の情報のCD-ROMもまだ手元に大切に取ってあります。
もし、今、ここに知子の情報をインストールして、当時のファイルを読み込んで眺めたとしたら、いったいどういう世界が広がっているのだろう。そのころのぼくは、何を見て、何を感じ、誰に恋をして、何を愛してきたのだろう。そういうことをぼんやりと空想していると、やはりなぜか知らないけれど、自然に涙がこぼれ落ちそうになるのでした。
http://www.teglet.jp/soft/tompro2/spec.html