なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 ネット上の情報発信と名誉毀損

ネット上で発信された情報に対し、名誉を毀損されたとして民事で損害賠償を求めたり、刑事告発して警察が強制捜査を行った例が、最近よく報告されています。
名誉毀損とはどのような場合に成立し、どのような場合に違法性が阻却されるのか、それについては今までいくつもの有益な記事が書かれています。小職も、この文章を書くにあたり、google名誉毀損の法律関係について論じたサイトを見てみましたが、さすがに大学教授や弁護士が書いているサイトであれば、とくに明らかな誤りというのはなさそうです。ですので、そういった情報が必要な方は、さしあたり、下記のサイトからリンクをたどってみてください。
http://www.yc.musashi-tech.ac.jp/~aoyama/policy/legislatin/meiyokison1.htm
さて、小職がいいたいのは、そのような学術的な議論ではなく(^^;)、上記のような社会になっている背景やらその影響とか、そういった分野です。
小職のもとには、いろいろな消費者被害にあった方からの相談があります。ちまたで「悪徳商法」と呼ぶものです。最近目につくのは、こういった悪徳商法を行っている業者が、まさにそのことを告発しようとしたネット上の発言をとらえて、名誉毀損だと主張する案件です。根拠もなしに、他人の社会的評価を下げるようなことをいってならない、これは当然のルールです。ですので、単にネット上、評判が悪いというだけで、無責任に他人の批判をしてはなりません。ですが、それなりの根拠を示して相手を批判し、あるいはその商法について告発する行為を、封殺しようとする態度が目立つのは残念なことです。
小職も、この欄でニュースを取り上げて、いろいろ意見をいうことがあります。小職は、決して法的に問題のある文章を書いているとは考えていませんが、それは、法律家としてのそれなりの経験があるからこそ判断できることです。一般の人が、そこまで考えて行動しなければならないとすると、それこそネット上での発言などはできなくなってしまいます。ネット上の書き込みに一定の社会的影響力があることは明らかですが、近時の言論封殺的傾向を見ていると、警察もプロバイダも過剰反応をしているとしか考えられないケースが目につきます。素人の発言なんだから大目に見たらどうか、などというつもりもありませんが、何が何でも摘発したり、発言の削除も求めるのではなく、もう少し、問題とされた発言の中身や、その発言の対象とされた相手方の活動とを照らし合わせて、発言者の違法性の有無や程度を判断すべきではないでしょうか。