なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

協同組合の出資金の返還と消滅時効

最高裁H23.4.22。
最高裁判断の要約)
 民法724条による消滅時効の起算点は、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時から進行する。
 本件と同様の立場にある出資者らにより、平成13年6月には先行訴訟が逐次提起され、集団訴訟も提起されたというのであるから、被害者は、遅くとも同年末までには加害者の行為が違法であるとの認識していたと見るのが相当である。
(コメント)
 このケースは破綻した金融機関への出資金返還が問題となっているケースですが、同様に、集団訴訟が先に提起され、あとから個別の被害者がそれを追いかけるという事例は、肝炎などの薬害事件や、詐欺的商法の消費者事件などでもよくみられるところです。この判例は、破綻金融機関の破綻処理や金融整理管財人の報告書の内容などにもふれて判断を導いています。したがって、上記のような他の類型の訴訟においても同じような考え方が直ちに妥当するというものではないかもしれません。しかし、いずれにしても、集団訴訟が提起されるような事件について、「自分も被害者かもしれない」という心当たりがあれば、早めに専門家に相談するのが良さそうです。弁護団の方針によっては、追加提訴という形を取って途中から裁判に加われるということもあります。
 損害賠償請求事件において、時効で負けるほど悔しいことはありません。そうならないようにお互いに注意しましょう。