なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 最高裁で逆転無罪

 電車内で女子高校生に痴漢行為をしたとして強制わいせつ罪に問われ、一、二審で実刑とされた防衛医科大学校の名倉正博教授(63)=休職中=の上告審判決で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は14日、「被害者の証言は不自然で、信用性に疑いがある」として、逆転無罪を言い渡した。教授の無罪が確定する。
 判決は「客観証拠が得られにくい満員電車内の痴漢事件では、特に慎重な判断が求められる」とした。同種事件の捜査や裁判に影響を与えそうだ。
 同小法廷は、手に残った繊維の鑑定などの裏付け証拠がないことから、唯一の証拠である被害者の証言について、慎重に判断する必要があるとした。
 その上で、痴漢被害を受けていったん下車した後、再度車両を変えずに被告の近くに乗ったとする女子高生の証言を、不自然で疑問が残ると指摘。全面的に証言の信用性を認めた一、二審の判断を「慎重さを欠いた」と退けた。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090414-00000079-jij-soci

 いままで、いわゆる痴漢えん罪事件として争われてきたものの中には、最高裁まで行って有罪が確定しているケースも多くあります。そうした流れの中で、最高裁が従前のスタイルを変えて、疑わしきは被告人の利益に、という鉄則に忠実であろうとしたのであれば、高く評価できるのではないかと思います。
 この種の事件では、やった、やらないの水掛け論になってしまい、最終的には「女子高生が恥を忍んで被害申告しているのだから、その供述の信用性は高い」なんて決めつけちゃっていたわけです。しかも、1,2審はこんな事件で実刑を選択していたんですよね。「否認すれば反省していないとみなして重罰にする」なんて思考が裁判官に植え付けられてしまっているなか、裁判員制度実施の直前にこうした判決が出されるというのは、それなりに意義深いものがあるんじゃないでしょうか。