なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その15)〜暴行現場に居合わせた少年は被害者を救護する義務を負うか?

◎暴行が行われていることや加害少年が暴行に及んだ経緯を知らず、単に加害少年から呼び出されて本件場所に赴いたものであるとして、現場に居合わせた少年らには、暴行を制止すべき法的義務がないとされた事例。暴行を制止すべき法的義務がなく、加害少年から仕返しを受けるかもしれないという状況の下では、暴行後に救急車を呼ばず、第三者に通報することもしなかったとしても、救護措置を執るべき義務を認めることができないとされた事例。
 最高裁平成20.2.28判例時報2005号10頁

(コメント)
 こういうケースはよくあるのではないかと思います。ボスキャラみたいな加害少年がいて、ある少年に暴行を加えている。そこに別の少年を呼びつけて見せつける、というシーンです。
 そうした場合、呼びつけられた少年たちは、被害者を救助する義務を負うのか。
 もちろん、道義的な責任があると言うことはだれも否定しないところでしょう。では、法的な救護義務を負うか。法的な義務、ということは、その義務を履行しなかった場合には、法的な(とくに損害賠償の)責任を負うということです。
 最高裁は、暴行に一切荷担せず、たまたま現場に呼び出されたに過ぎない少年たちには、そうした義務はないと判示しました。反対(責任を負うという)意見もついていますが、まあ妥当な判決ではないかと思います。