なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

ちょっと冴えない今年の「平和宣言」

 市長が変わって初めての「平和宣言」。就任後、被爆者の態度をあからさまに批判するなど、「これが本当に被爆地の市長なのか」という感じがありました。
 そんな市長が作る平和宣言には、さしたる期待もしていなかったのですが、やはり、ちょっと冴えないものになっていたという評価は拭えません。
 とくに残念なのは、被爆者の声を引用するところが多くて、市長の肉声に欠けていたところ。もちろん、市長自身は、被爆者の声をどうにかして伝えたい、後世に語り継ぎたいという思いがあったのでしょう。ですが、その分、分量的にも、市長のオリジナルの考えや展望を語るところが乏しかった。市長は、市政全体について、「何がやりたいのかよくわからない」という批判を受けていますが、平和宣言もそれに似たような結果になってしまったのは、ちょっと残念でした。
 さらには、今後の原子力行政についても、

 また、東京電力福島第一原子力発電所の事故も起こり、今なお続いている放射線の脅威は、被災者をはじめ多くの人々を不安に陥れ、原子力発電に対する国民の信頼を根底から崩してしまいました。そして、「核と人類は共存できない」との思いから脱原発を主張する人々、あるいは、原子力管理の一層の厳格化とともに、再生可能エネルギーの活用を訴える人々がいます。

 日本政府は、このような現状を真摯(しんし)に受け止め、国民の理解と信頼を得られるよう早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきです。また、被爆者の高齢化は年々進んでいます。日本政府には、「黒い雨降雨地域」を早期に拡大するとともに、国の内外を問わず、きめ細かく温かい援護策を充実するよう強く求めます。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110806dde007040053000c.html

 としています。要するに「脱原発を主張する人」がいるのだから、そのような現状を真摯に受け止めて、政策を見なおせ、と言っているのです。市長自身は、「脱原発」の立場を支持するのかしないのか、広島の市長としてどう考えるのか、あるいは考えないのか、そうした貴重な意見表明の場を活かさず、まるで「○○くんが○○と言っています」式の小学校のホームルームのような宣言には、いささか幻滅したと言わざるを得ません。
 市長も今回が初めてのことなので、ちょっと遠慮したところがあるのかもしれません。市長も経験を積んでいく中で、また変わっていってもらいたいと期待します。