なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

最高裁判例ほど面白い読み物はない?

 最近読んだ藤田宙靖さんの講演録に、「最近は、最高裁判例ほど面白い読み物はない、といわれることがあります」という旨の記述がありました。
 最高裁以外の裁判所では、たとえ合議体を組んで裁判をする場合でも、裁判官が個別に独自の意見を述べることはありません。裁判員裁判などでも、もちろん、同じことです。合議の結果、多数決で結論が決まれば、その結論どおりの判決が書かれるだけで、「意見が分かれたけど」なんて書かれることは絶対にありません。
 ところが、最高裁判決に限っては、裁判官が個別に意見を述べることができます。多数決で決まった判決文に付け足して自分の見解を敷衍する「補足意見」とか、結論に真っ向から反対する「反対意見」などがあります。最高裁といえども、多くの判決は「全員一致で」なされているものですが、最近はこうした個別意見がつく判決も多く、それはそれでなかなか面白いものです。
 とくに刑事事件などでは、その裁判官の出身(検察官出身とか弁護士出身とか)でカラーがばっちり分かれたりして、「さすがは検察官だなぁ」と悪い意味で感心することもしばしば。
 それにしても、最高裁判例が読み物としてものすごく面白いかといえば、決してそんなことはないと思いますが、藤田宙靖さん(行政法学者です)の意見は、学者らしく筋の通った理論的な意見が多くて面白かったですね。
 今日は、たまたま読んでいた判例時報(2089号)に、家の真向かいに葬儀屋さんができてしまい、家の2階から葬儀場が丸見えになって出棺の様子などがモロ見えになってしまうという人が起こした裁判の最高裁判決(平成22年6月29日)が載っていました。1審、2審が、葬儀社に対して、塀をかさ上げして向かいの家から見えないような対策をとるよう命じたのに対し、最高裁がこれを破棄して請求棄却の判決をしたものです。これは藤田さんがやめた後の第3小法廷の判決で、4名の裁判官の全員一致の判決でした。田原さんの蛇足意見もついておらず、ちょっともの足らない感じがしました。最近は、葬儀ホールを巡る近隣住民からの相談も少なくないので、もうちょっと意見が割れるかとも思ったんですけどね。