なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

ヤンママの離婚に生活保護を

 若いシングルマザーが幼い子供二人をおいて家を出て、その二人の子供が亡くなってしまうというショッキングな事件がありました。近所の人が子供の泣き声に気づいて通報もしているのに、何もしなかった児相。こういう事件が報じられるたびに、児相のあり方が問われているけど、一向に児相の対応って変わらないのね。
 そんなニュースについて、「誰が何をネグレクトしたのか」という秀逸な記事を、id:iasnaさんち経由で知りました。
 著者は、20代で結婚、出産して離婚した女性には、(1)本人がトップ女優や歌手で高額収入がある、(2)別れた夫に相当の稼ぎがあり、母子3名の生活費を何年にもわたって払い続けられる、(3)実家の親が助けるなど、恵まれた環境にある一部の人をのぞいては、限られた収入しかないケースが多いことを指摘しつつ、

「では、このまま生活保護課に行って、手続きしていってくださいね」と、離婚届けを受理する係の人が、離婚届けと引き替えに生活保護申請書を渡しながら言う必要があるんじゃないの?

 と述べています。
 実にもっともな指摘です。若い母親の多くは、子育てに追われて社会経験が乏しいことも多く、離婚時に適当な職業が見つかっているケースは多くありません。あったとしても、パートやアルバイトの不安定な職場であることも多いです。しかも、夫も若い人の場合が多く、離婚後の子供に養育費を支払えないこともざらにあります。
 こんなとき、行政は、母子手当ての支給や公営住宅の斡旋程度はやってくれますが、生活保護という選択があることをきちんと説明することは極めてまれです。親を頼ろうにも、親自体が生活にていっぱいだったり、離れて暮らしていたりして、わが子や孫の援助までできないことだって、今では珍しくないのです。
 もちろん、離婚時にちょっとした現金やパートなどの仕事があったりして、すぐに生活保護の要件を満たすわけではないというケースもあるでしょう。ですが、そうした母親であっても、いつ仕事がなくなったり、あるいは蓄えが底をつくかわかりません。そうしたときに、セーフティネットとしての生活保護がきちんと機能するためには、離婚時に、母親に対して「いざというときには生活保護という手段がある」ということを教えておくことが必要です。生活保護が認められれば、医療費も基本的に無料になります。お母さんだけでなく、幼い子供もそれで救われる可能性が大きいのです。
 今回の事件を教訓にして、児相や生活保護行政のあり方を、根本的に変えていく必要があるんじゃないかな。
 民主党が、子供を大切にする政策にスタンスを移しかけているいまが、そうした政策をもっと積極的に進めるチャンスです。