違法な競売停止仮処分申し立てと損害賠償の範囲
<盛岡地裁平成20.9.2 判時2070-109>
この顧客は、長年の銀行のとトラブルがあったようであり、顧客が銀行を相手方として行った競売停止仮処分の申し立てそのものが、故意(悪意)による不法行為とされた事例。
そのうえで、この判決は、抵当権者(銀行)が受けた損害として、?本来であれば得られたであろう配当額と、実際に交付を受けた配当額の差額が損害であるとしている。そのほか、?運用利益に相当する年4%(と銀行が主張)の損害も認めているところに特徴がある。
?については、本件の事例でも不動産鑑定士による鑑定がなされているようであるけれども、「本来であれば得られたであろう配当額」を立証するのは意外と困難を伴う。最近ではあり得ないことかもしれないが、土地価格が上昇している局面だったらどうするのかなんて考え始めると、余計にわからなくなりそう。
なお、この判例時報コメントに、「担保権の実行が遅れた場合には、通常高い利率が設定される遅延損害金の発生を伴うから、被担保債権とは別に不法行為による損害賠償請求権として構成する実益があるのは、担保権者が被担保債権についてのみ物上保証のみをしている場合に限られるものと思われる」としているが、疑問あり。債務者から担保を出してもらっている場合でも、債務者が無資力だったり破産していたりすることもあるわけで、そうした場合には損害が現実化しているものとして、不法行為に基づく損害賠償を認めるべきであるように思う。