なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

何が何でも刑事責任を問いたがる社会

 北海道の遭難事故について、ツアー会社の社長の刑事責任が問われるかもしれない。
 JR西の社長も起訴されたし、シンドラーエレベータの関係者も起訴された。
 ホリエモン村上ファンドも。
 なにかがおかしい気がする。
 このあたりは、民事の責任追及で十分ではないのか。彼らを責め立て、刑事の法廷に立たせ、刑務所に送ってどうなるというのだろうか。
 わが国では、起訴するかしないか、その権限は検察官が独占している。検察官が起訴しないと判断したときは、検察審査会が動くことはできる。しかし、その逆はできない。検察官が起訴するという権限を行使したとき、それに異議を唱えてなかったことにしたり、その当・不当を審査する機関はない。もちろん、法律を学んだ人ならよく知っているとおり、「公訴権乱用の理論」というものはある。しかしそれは、誰が見ても犯罪に当たらないようなものを、検察官が私怨で起訴してしまったような、およそ考えがたい事態にしか適用されない。冒頭に書いたような、微妙な事案では、公訴権の行使が乱用であると判断される可能性はゼロだ。
 もちろん、オレオレ詐欺とか、政治家の汚職とか、そうしたものはどんどん起訴すべきだと思う。しかし、そうした犯罪と、上に挙げたような過失犯の事例は根本的に別だ。また、被害者がいるのかいないのかわからないような経済犯罪もそうだ。
 まあ、世の中の大半は彼らを起訴することに何らの躊躇も感じないばかりか、むしろ検察のやり方に拍手喝采するのかもしれないが、そうした社会であってほしいとはぼくは思わない・・・。