なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 久しぶりに元気が出る判決だ!

 佐賀少年刑務所佐賀市)に勾留(こうりゅう)されている刑事被告人に市販の便箋(びんせん)と封筒を差し入れようとして拒否されたのは「接見交通権」の侵害にあたるとして、佐賀県弁護士会所属の富永洋一弁護士(30)が国家賠償法に基づき国に慰謝料など約160万円を求めていた訴訟の判決が30日、佐賀地裁であった。神山隆一裁判長は差し入れの拒否は違法と認め、15万円を支払うよう命じた。

 判決によると、富永弁護士は、常習累犯窃盗事件の被告の国選弁護人になり、07年9月、被告に被害者への謝罪文を作成させるため、市販の便箋7枚と封筒1通を差し入れようとした。だが、同刑務所はこれを拒否。所内の売店で売られているものを買って、差し入れるよう指示した。

 刑事訴訟法では、容疑者や被告が立会人なしで弁護士と会い、書類や物品を授受できる権利(接見交通権)が認められているが、逃亡や罪証の隠滅につながるようなものの授受を防ぐため、収容する刑事施設側には物品の事前検査が認められている。

 ただ、刑事施設側がすべての物品を検査するのは業務への過剰な負担になるため、刑事施設側は法務省令に基づき内規を設け、一部の物品については、その刑事施設内の売店などで取り扱うものに限定している。

 富永弁護士は、こうした内規や法務省令について、憲法が保障する接見交通権を侵害し、違憲だと主張。「便箋など、弁護活動に必要なものについては、内規から除外すべきだ」と訴えていた。これに対し、国側は問題ないと反論していた。

http://www.asahi.com/national/update/0330/SEB200903300007.html

 前にも書いたと思いますが、刑務所の売店矯正協会という法務省の互助団体みたいな組織が牛耳っています。佐賀の扱いは所内売店の売り上げを確保するためのせこい手段化と疑ってしまいますね。
 誰もが疑問に思うこうした扱いですが、金額が些少なだけに、わざわざ国家賠償訴訟なんて起こそうとは思わないものです。果敢にチャレンジして見事に勝訴判決を勝ち取ったこの弁護士さんに拍手を送りたいと思います。
(4/1追記)
 リンク先の朝日新聞の記事が微妙に書き換わっていたので、書き換え後の記事も引用させていただきます。

 佐賀少年刑務所佐賀市)が、勾留(こうりゅう)中の刑事被告人に対する市販の便箋(びんせん)と封筒の差し入れを、法務省令に基づく内規によって拒否したのは「接見交通権」の侵害にあたるとして、佐賀県弁護士会所属の富永洋一弁護士(30)が国家賠償法に基づき国に慰謝料など約160万円を求めていた訴訟の判決が30日、佐賀地裁であった。神山隆一裁判長は「内規は裁量権を逸脱して違法」として、内規を定めた刑務所長の過失を認め、国に慰謝料など15万円を支払うよう命じた。

 法務省によると、刑務所や拘置所などの刑事施設は全国に77カ所あり、すべての施設が個別に内規を設けて差し入れを限定。ほとんどが、市販の便箋と封筒の差し入れを制限しているという。日弁連によると、刑事施設内の被告への物品差し入れ制限をめぐる訴訟は全国初。憲法や刑事法の専門家らは全国の刑事施設に影響を与える判決という。

 判決によると、富永弁護士は、常習累犯窃盗事件の被告の国選弁護人として07年9月、被告に被害者への反省文を書かせるため市販の便箋7枚と封筒1通を差し入れようとしたが、同刑務所は所内の売店で買ったものの差し入れを指示した。

 神山裁判長は同刑務所の内規について「被告に所持金がなければ、弁護人がわざわざ指定業者から買って差し入れない限り、反省文の提出自体が困難になる」などとして最小限の制限とは到底言えないと批判。ただ、被告人と弁護人の物品の授受を制限し得るとする法務省令自体は適法とした。