今日の裁判例(その8)
統一教会の元信者が、勧誘を担当していた信者との間で締結した不起訴の合意が有効とされる一方、統一教会本体に対してはその効力が及ばないとされ、統一教会の使用者責任が認められた事例。
東京地裁平成20.1.15判例タイムズ1281号222頁
(コメント)
引き続き判タ1281号から。
統一教会による被害は、当地でもまだまだ後を絶ちません。あれだけ騒がれていたんですが、最近は昔の騒動を知らない若者がターゲットになっているのかもしれません。
上記の裁判例では、被害者と信者との間で、損害の大部分を分割弁済する合意書が存在しており、そこに、不起訴の合意が記されています。不起訴の合意というのは、民事上や刑事上の訴えをしない、というものです。
しかし、そうした合意を軽々に認めることは、裁判を受ける権利という観点からは問題があるし、なによりも、こうした宗教被害(マインドコントロール)の事例ではどうかとおもいます。被害者側に弁護士がついているとか、そうした特殊な事情がない限り、不起訴の合意を認めるのはいかがかと思います。
今回の事例の深いところは判決文からだけではわからないのでしょうが、結論にはやや疑問が残ると考えます。
いずれにしても、統一教会の活動がまだまだ沈静化しておらず、そうした被害がまだ発生していることについては、改めて注意喚起が必要かと思います。裁判でもほとんどの事例で被害者側が勝訴していると思われるので、被害者も泣き寝入りすることなく弁護士に相談してみてはどうでしょうか。