なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

ネットもケータイも使わない弁護士たちの妄言

 今日は湯田温泉で、このあたりの弁護士が集まる年1回の会議がありました。
 毎年、ここでいくつかの宣言や決議を採択して、1年間の活動方針にします。ことしは、「取り調べの可視化の実施に関する決議」や「ひとり親(母子家庭)への支援を求める議題」などが採択されました。
 そんななか、激しく不毛なやりとりがあったのは「ICT社会と子どもの権利に関する宣言」について。その中には、たとえば「子どもは、等しく、インターネットにアクセスし、情報の流通過程に接続することができる(平等原則)」とういのがあるのですが、これが主としてネットやケータイの世界に縁遠い、高齢の弁護士サイドから猛反発を受けました。曰く、「こんな宣言を出したらこれが一人歩きして世界の笑い物」とか「一部の子どもが『こういう宣言があるのだからネットを自由にみさせろ』、『ケータイを買ってくれ』などと言って言うことを聞かなくなる」など言いたい放題。子どもの権利条約をわが国が批准していることや、そこで子どもの自己決定権が高らかに宣言されていることなどをご存じないのでしょうか。彼らは。
 挙げ句の果てに、「ネット、ネットと騒ぐからホリエモンみたいなやつが出てくる。そうした社会からはアフガンで命を落とした伊藤さんのような若者は出てこない」など、もう妄想のオンパレード。
 こういう人に限って、枕詞として、「私はもちろん、ケータイなどを持っていない少数派ですが」とか、「インターネットなどは事務員が使うだけです」なんてつけるんですよね。
 そもそも、インターネットもつかわず、ケータイも通話機能程度しか使わない人間に、どうしてインターネットの功罪やそれにアクセスして情報をやり取りすることの楽しさや怖さがわかるというのでしょうか。そしてまた、インターネットの常時接続を有する家庭が過半数になりつつある反面、ワーキングプアの問題などでPCも持たせてもらえず、ネットに接続することさえできない子どもがいるなど、小さいうちから情報格差やネットリテラシーの格差が生まれていることなどの問題意識が的確に持てるというのでしょうか。
 そうした状況に身を置いていないからこそ、あたかもネットを悪者扱いし、ネット環境が社会悪の現況であるかのような発言をしてしまうのでしょう。
 もちろん、彼らのこうした妄言は、多数派を占めるにまでは至らず、宣言案を微妙に修正することで無事、採択されました。
 それにしても、弁護士会の定期行事で、こうしたことをいう弁護士が何人も現れるというのには、正直言ってあきれるばかりでした。自分達がよくわからない問題であれば、余計な口出しして顰蹙を買うようなことはしなければいいですけどね。