なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 橋下府知事は速やかに賠償金の支払いをせよ

 山口県光市の母子殺害事件で殺人などの罪に問われ、今年4月、差し戻し控訴審で死刑判決を受けた元少年(27)の弁護団の4人(広島弁護士会所属)が、テレビ番組で懲戒請求を呼びかけられたため業務に支障が出たとして、弁護士でもある橋下徹大阪府知事を相手取り、1人300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、広島地裁であった。

 橋本良成裁判長は、橋下知事に1人200万円、計800万円の支払いを命じた。

 橋下知事は「多くの人に大変ご迷惑をおかけしました」「テレビ出演者として表現の自由の範囲を誤ったことは間違いありません」などと謝罪。「判決が不当だとは一切思っていない」と強調しながらも、「3審制の中で、高裁の意見を聞きたい」と控訴する考えを明らかにした。

 刑事弁護人の役割が世間から誤解を受け、批判を受けることがあることは、弁護士としてよく理解できます。かくいうわたくしも、妻からでさえ、「なぜあんなやつの弁護をするのか。厳罰を受けて当然ではないか」という非難を浴びることがあり、その説得には苦労することがあります。
 ですから、光市事件の弁護団が、世間から一定の批判を受けるであろうことは、弁護人としてある程度覚悟していたことではないかと思います。そうはいっても、懲戒請求を、同業者である弁護士から、それもマスコミ(テレビ)を通じて、広く呼びかけられることになろうとは、さすがに弁護団自身も想定だにしていなかったはず。そして、橋下弁護士の呼びかけによって、多数の懲戒請求がなされ、それによって、弁護団はもちろん、弁護士会も多くの手間をかけさせられたことは厳然とした事実です。弁護士であれば、刑事弁護人の役割がどういうものか、懲戒請求を受けることでどのような悪影響が生じるか、正しく理解できて当然のはずであり、確信犯的に懲戒請求を呼び掛けた橋下弁護士の態度は、まさに断罪されて当たり前というべきでした。
 この判決は、そうした流れをきちんと分析したうえで、橋下弁護士(というか府知事)の言い逃れを封じたもので、予想どおりの内容とはいえ、その見識は高く評価したいと思います。
 橋下弁護士は、判決が不当とは思ないとしながら、控訴するという分裂したコメントをしているようですが、さっさと賠償金を支払ってほしいものです。仮執行宣言が付いているなら、強制執行してもよいのではないでしょうか。
 ぼくは、この事件に絡んで、事前に某新聞社から、コメントを求めらていましたが、ネットニュースを見る限りでは、ぼくのコメントは紹介されていないようです。うかつにしゃべりすぎてしまったこともあり、載っていないことを知ってほっとしています(^^;)。