なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

模擬裁判の評議に異議あり

 裁判員裁判の導入を1年後に控え、各地では模擬裁判が行われています。
 実際にあった事件を素材にした台本をもとに、検察官と弁護人が、実際に自分たちで主張を考え、法廷でやりあいます。そして、一般から選ばれた裁判員役の市民が、実際にそれを見て、裁判官と評議をして、有罪か無罪か、量刑をどうするかを決めます。
 模擬裁判ならではの点は、その評議を第三者も見られること。評議室で裁判官がどのように裁判員と接しているのか、裁判員はどのような発想で意見を述べるのか、それがモニタで中継されて公開されます。実際に制度が始まってしまえば、こうした公開評議などは絶対に行われないので、模擬裁判でのこの取り組みは、弁護士にとっても貴重な経験です。
 しかし、その公開評議を見て腹が立つのは、裁判員をなんとか誘導して自分たちの古典的な発想や量刑相場に持って行こうとする涙ぐましいまでの裁判官の態度。口では、「裁判員制度というのは、裁判員の新鮮な意見を裁判に取り入れようという制度なので、遠慮しないで意見を言ってください」とか、「量刑の相場を気にすることはないですよ」とかいうのですが、いざ、評議が進んで裁判員が被告人に同情するような発言を始めると、たちまち「それはちょっとどうでしょうか」などと発言を微妙に遮って誘導を始めてしまいます。テレビでモニタリングされていることがわかっていてもそうした態度なのですから、実際に非公開になってしまえば、ますます露骨に誘導しちゃうのではないでしょうか。そんなに裁判官の意見にそうように評議を持って行きたいなら、裁判員制度なんかやめてしまえばいいんですよ。もともと裁判所は裁判員制度の導入に反対だったわけで、市民の意見を取り入れようという姿勢は形だけなのかもしれません。