なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 「執行された方」の意味は?

 「苦しんだ揚げ句に死刑を執行した。彼らは『死に神』に連れて行かれたのか」。鳩山邦夫法相は20日の閣議後会見で、13人の死刑執行を命令したことを朝日新聞が「死に神」と表現したことに対し「軽率な文章には心から抗議したい」と怒りをあらわにした。
 朝日新聞18日付夕刊の「素粒子」欄は、鳩山法相について「2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」などと記載した。
 これに対して鳩山法相は「極刑を実施するんだから、心境は穏やかでないが、どんなにつらくても社会正義のためにやむを得ないと思ってきた」と語り、「(死刑囚にも)人権も人格もある。司法の慎重な判断、法律の規定があり、苦しんだ揚げ句に執行した。彼らは死に神に連れて行かれたのか」とマイクが置かれた台をたたいて声を荒らげた。
 さらに「私に対する侮辱は一向に構わないが、執行された人への侮辱でもあると思う。軽率な文章が世の中を悪くしていると思う」と語った。

http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008062001000344.html

 いくら少ない字数で風刺をするコラムといえども、「死に神」はセンスが悪いですね。ただ、「死に神」呼ばわりすることが死刑囚の人権や人格を否定することにはならないと思うけど。ちなみに、死刑囚は、「心情の安定を図る」という理由で、外部への面会や投稿なども極端に制限されています。法務大臣が死刑囚の人権や人格を大切にしたいなら、もっと彼らに人間らしい最期を送らせてやるべきだと思いますね。
 話がずれました。ともかく、鳩山を軽蔑したい気持はわかるけど(^^;)、これでは大臣を殺人鬼呼ばわりするのとそう変わらないわけで、いかにも品位のないひとことであったのは確かと。
 そして、大臣の最後の一言「執行された人への侮辱でもあると思う。」というのは、しばらく理解ができませんでした。「執行された人=死刑囚」のことかと思っていたのですが、どうやら、大臣が言いたかったのは、絞首刑のボタンを実際に押した拘置所職員のことをいいたいのだと気づきました。受け身刑ではなく尊敬語だったのですね。これなら趣旨は理解できます。ただ、朝日はあくまでどんどん命令を出す大臣を死に神にたとえているだけで、職員を批判しているとは思えないので、的外れな非難であると感じますが。
 執行廃止論者を日本から出ていけと論じる産経と、大臣を死に神と呼ぶ朝日。どっちもどっちですが、「軽率な文章が世の中を悪くしていると思う」と批判するのもまた、どこかずれているような気がする。