なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 上手い文章とは

 この間読んでいた本に、上手な文章には無駄な接続詞がない、ということが書いてありました。自分の日記を読み直してみると、「そして」、「ところが」、「そういうわけで」、「というのは」、「だからこそ」とか、接続詞やらそうでないのやら、文と文の間に余計なフレーズが多すぎるみたいです。自分としては、文章の論理を明確にしようと意図して、そのようなフレーズを多用していたのですが、本当にいい文章というのは、そのような接続詞を用いなくても、文と文の意味合いだけでいいたいことが伝わるもので、接続詞に頼るというのは見苦しいということのようです。
 通勤途中に、池内紀の「ひとり旅は楽し」(中公新書)という本を読んでいます(ひとり旅は楽し (中公新書))。著者はさすがに文学者だけあって文章がうまく、旅情や旅の余韻などが手にとるように分かります。接続詞、という観点でみると、やはりそのような無駄なものはほとんどないのです。例を挙げてみます。「島に渡ると」と題された文章のラスト2行です。

 私は弓をふりしぼるしぐさをしてみせた。瀬戸内海特有の凪いだ海がキラキラ光っていた。眩しくて目をあけていられない。陽気がまぶたの裏まで沁みてくるようだった。(10頁)

 どうですか。小職が同じ文章を書く(もとよりそのような能力はありませんが)としたら、文と文の間に、「そのとき、」、「そのため、」、「だから」とかいうフレーズを思わず入れてしまいそうです。行間を読ませるというか、文章の味わいを残すという点からは、やはり無駄な修飾語や節は、極力そぎ落とすというのがいいのかもしれませんね。