なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 小泉首相訪朝の成果

 曽我さんや横田さんなど、家族会の多くの人は失望していた。最悪の結果だ、とも口にされていた。彼らは、被害者の家族だ。だから失望を感じるのはいたいほど分かるし、やり場のない感情を吐露したくなる気持ちも理解できる。
 しかし、一部マスコミやその他、とくに利害関係もなさそうな人たちまで、小泉首相訪朝が失敗だと書き立てるのはどうだろうか。拉致事件の責任は、全面的に北朝鮮にある。小泉以前の政府が無策過ぎたという大きな反省点はあるにせよ、悪いのは北朝鮮であることに変わりはない。しかも、小泉首相の前回の訪朝後、1年半にわたって家族の帰国を妨害し続け、小泉首相は外交的には異例とされる2度続けての訪朝を余儀なくされた。そのような環境の中で、家族5名と一緒に帰国するところにこぎ着けたという小泉首相の努力は、率直に高く評価すべきだと思われる。小泉首相が訪朝しなければ、5名の帰国は実現しなかっただろう。そう考えると、他の家族の帰国が叶わなかったとはいえ、まずは喜ぶべき事態であるといえる。
 ジェンキンスさんの問題にしても、帰国を拒否したのはジェンキンスさん本人であって、第3国での面会約束を取りつけた点は、もう少し評価されてもよいのではないだろうか。小泉訪朝失敗説の論拠は、要するに、さしたる進展もないのに、コメ支援などの約束をして北朝鮮にアメを贈ってしまったという点にある。しかし、横田さんなどの問題についても、白紙の状態での再調査を約束させており、しかも、その調査にわが国も関与し、かつ、その調査とコメ支援がリンクしているのであって、政府としては巧みにわが国の要求を北朝鮮にも受け入れさせるように配慮しているのである。
 もとより、これで拉致問題が解決したものでもなく、家族らの納得が得られるまで、政府としては努力をしなければならないことはいうまでもない。けれども、今回の訪朝は、前回のような劇的な内容には乏しかったが、内容的には得るものが多かったと考えられる。参院選前のパフォーマンスという側面がないとはいわないが、膠着状態を打開したという意味で、訪朝が早すぎたという批判はあたらないだろうと思う。