なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

裁判員制度

http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20040205
アンテナにいれてある岡口裁判官のページで、岡口さんは次のように述べられています。

ところで,弁護士会は,裁判員の意見を,天の声,神の声くらいまで神格化してしまっていますが,あまりに神格化してしまうと,裁判員の判断で冤罪となった疑いが生じたとき,弁護士会が動けなくなりませんか・・・。

うーん、神格化している弁護士会があるのでしょうかね。弁護士の中でも刑事事件に力を入れている弁護士には、少なくとも裁判員制度の導入に諸手をあげて賛成している人はいないのではないかと思います。むしろ、裁判員への配慮を重視する余り、連日開廷だの冒頭陳述の簡略化だの法廷の劇場化だの、被告人の利益がないがしろにされる方向へ裁判制度の改革(こんなものは改悪でしかないが)が進むのではないかという不安が、弁護士には強いと思います。
小職も、裁判員制度の導入は時代の流れなので、いまさら反対はしませんが、裁判員の意見が正しくて、裁判官のそれが間違っているとはとても思えません。ただ、現役の裁判官の前でいうのも憚られますが、現状の刑事裁判は、ときとして検察官が二人いるといわれることがあるくらいで、刑事事件に取り組む裁判官の熱意は、年々低下の一途をたどってきているように思えてなりません。もちろん、どの裁判所にも一人くらいは丁寧に審理をする裁判官がおられますが、逆に、被告人の弁解など聞きもせず、勾留状にはほいほいと判を押すが保釈はぜったいに認めないというような、どうしようもない裁判官がいるのもまた事実です。そして、弁護士は現在の刑事裁判に対して、悲観的というか絶望的な感覚を持っているのも間違いないことです。
裁判員制度の導入には、もちろん上で述べたような怖さがあるのですが、それが逆に、刑事裁判の絶望的状態に風穴を開けるきっかけになる可能性を秘めていることも確かなようです。