なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 何でも世論で決めるなら、まずは小沢が辞職すべき

 死刑制度に対する意識を探る内閣府の昨年の世論調査で、死刑を「やむを得ない」と容認する人の割合が過去最多の85.6%となったことがわかった。同府が6日、結果を公表した。同じ質問で1994年から5年ごとに調査が続けられているが、回を追うごとに容認派が増えている。結果からは、犯罪被害者の憤りに対する共感や、死刑を廃止すると凶悪犯罪の増加につながりかねないとの不安がうかがえる。
(中略)
 国際的には近年、死刑廃止の流れが定着している。08年には国連規約人権委員会が日本政府に「世論に関係なく廃止を検討すべきだ」と勧告するなど風当たりは強まっているが、政府は「世論の支持」を根拠に存続の姿勢を崩していない。

http://www.asahi.com/national/update/0206/TKY201002060263.html

 政治には、世論の反対を押し切ってやらねばならない課題と、世論の動向を見ながら決めていくのがベターな課題とがあると思う。死刑の問題は、あきらかに前者の問題だ。私刑や仇討ち、報復といった過去の刑罰観を克服し、国家刑罰権の独占とか、裁判の制度などを作り出してきたのは、大げさに言えば人類の英知そのものだ。そうであるなら、世論がどうあれ、死刑を廃止すべきときは廃止すべきだし、世論をリードして次の時代につなげていくことこそが求められている分野だと言える。
 そもそも、裁判員制度だって、国民の多くは理解していなかったし、反対論のほうが多かった。それを押し切ったのも当時の政府だし、今の民主党政府だって、「世論の支持」を理由として裁判員制度を直ちに廃止するなんてことは考えていないだろう。ならば、死刑の存置についていちいち「世論の支持」を理由に持ち出すのは、そろそろやめた方がいい。
 なんといっても、民主党の幹事長は、完全に世論からは支持されていない。小沢の説明を聞いて納得していない国民は実に8割に達しているし、辞職を求めている世論のほうがはるかに大きい。にもかかわらず、当の小沢はもちろんのこと、首相や政府高官も、小沢の進退にはアンタッチャブルだ。そんなに世論を重視した政治をやりたいのなら、まずは小沢が政界を去って見本を示すべきだ。それすらせずに、より大切な(と私は思う)死刑の問題について「世論」を口にする資格はないと知るべきだ。
 要するに、死刑の存置なんて世論を気にしていてはできない議論だし、世論を気にする必要のない分野だ。内閣府のこうした世論調査こそ、無駄な事業として廃止すべきだと思うよ。