なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

atok2010の実力を試す!

 今年は一太郎を予約してみました。未だに一太郎を使って添付ファイルなんかを送ってくる人が多いこの業界。おいらがwindowsマシンの呪縛から離れられないのも、一太郎があるからと言っても過言ではありません。
 さて、一太郎といえばatok。最近はやりのgoogle日本語入力と比べてみました。
 テキストに使わせてもらったのは、「書式 告訴・告発の実務」(民事法研究会)です。atok2010はインストール直後の素の状態で、使ってみました。google日本語入力とoffice2007 IMEは、それぞれちょっとだけ使ったことがある状態でのテストです。そういう意味では、まったく公平な扱いではありませんので注意してください。
 テストは、テキストの中の文章を頭から入力して行き、句読点のところで変換キーを押して変換します。もちろん、同音異義語の選択や文節区切りの間違いがあってもそのまま確定させ、次の文章に進んでいます。通常は、間違いがあったらその場で直しますから、実際の使用のシーンでは、同じ誤りを繰り返すことはないんじゃないかと思いますがね。
 それでは、テスト結果を紹介してみます。
 まずはatok2010から。

 実務的には、告訴状や告発状が司法警察職員または検察官の手元に届いただけでは十分ではなく、これが「受理」されることが必要である。「受理」は、告訴・告発を有効な行為として受領する司法警察員または検察官の受動的な行為のことであるが、この受理をなした形がとられていないと、捜査機関内で有効な告訴・告発がなされていないものとして扱われるからである。
告訴・告発の要件を満たしている場合に、司法警察員あるいは検察官が受理を拒絶することは許されないのが法の趣旨である。しかし、告訴状や告発状の中には、犯罪の成立を認めるために必要な重要事実が欠けているとか、その他の告訴の有効要件の機才を欠いているために、その点が補充されなければ有効な告訴または告発として扱えないものもある。

 ほぼ完璧な変換です。間違いは2箇所。最初の文の「手元」がテキストでは「手許」になっています。これはむしろ、前者を使うのが普通だと思うので、atokの間違いだと決めちゃうのはちょっとかわいそうです。次のミスは、最終文の「機才」。「機才を欠く」という慣用表現に引きずられたのかもしれませんが、もちろん「記載」が正解です。変換速度も申し分ないし、さすがはatokと褒めておきたいところです。
 次は、無料なうえに、ネット上の語彙が豊富で楽しいgoogle日本語入力を見てみましょう。

 実務的には、告訴状や告発状が司法警察職員または検察官の手元に届いただけでは十分ではなく、これが「樹里」差れることが必要である。「樹里」は、告訴・告発を有効な好意として受領する司法警察員または検察官の受動的な行為のことであるが、この受理をなした形が撮られていないと、操作期間内で有効な告訴・告発がなされていないものとして扱われるからである。
告訴・告発の要件を満たしている場合に、司法警察員あるいは検察官が受理を拒絶することは許されないの画法の趣旨である。しかし、告訴状や告発状の中には、犯罪の成立を認めるために必要な重要事実が欠けているとか、その他の告訴の有効要件の記載を書いているために、その点が補充されなければ有効な告訴または告発として扱えないものもある。

 こちらはちょっと悲しい結果になりました。「手元」はまあ、atokと同じで許容範囲ですが、ここで「樹里」はないんじゃないでしょうか。へんな学習をしてしまったのかもしれませんが、心当たりはありません(^^;)。樹里ちゃんなんて知り合いはいませんので(汗)。「樹里」差れる、というのも納得できないミスですね。そのほか、「好意」「撮られて」「操作期間」「書いている」など、同音異義語の選択の誤りが目立ちます。また、「許されないの画法の趣旨」という文節区切りのミスは非常に気になるところです。
 全体的に、練り込みが浅いという感じで、なんども校正を繰り返す必要があるかもしれず、それこそ「捜査機関」に提出する告訴状の作成に使うのはヤバそうです。
 さて、最後はOffice2007 IME。こちらも使ってみました。

 実務的には、告訴状や告発状が司法警察職員または検察官の手元に届いただけでは十分ではなく、これが「樹里」されることが必要である。「樹里」は、告訴・告発を有効な行為として受領する司法警察員または検察官の受動的な行為のことであるが、この樹里をなした形が取られていないと、捜査機関内で有効な告訴・告発がなされていないものとして扱われるからである。
告訴・告発の要件を満たしている場合に、司法警察員あるいは検察官が受理を拒絶することは許されないのが法の趣旨である。しかし、告訴状や告発状の中には、犯罪の成立を認めるために必要な重要事実が欠けているとか、その他の告訴の有効要件の記載を書いているために、その点が補充されなければ有効な告訴または告発として扱えないものもある。

 「樹里」はgoogleと同じミス。「書いている」も同じですね。しかし、間違いはこれだけ。atokと並ぶ変換精度というのは意外です。まあ、こちらも有料ソフト(一太郎より高い)についてくるIMEですから、このくらいできて当然なんですね。
 ということで、けっこう面白かったこの対決。自分としては、仕事上の文書作成にはatokを使い、日記の更新などにはgoogle日本語入力を使うのが良さそうに思います。
 さて、テキストに使ったこの本の上記の文章ですが、論理的に間違っていると思います!

書式 告訴・告発の実務―企業活動をめぐる犯罪の理論と書式 (裁判事務手続講座)

書式 告訴・告発の実務―企業活動をめぐる犯罪の理論と書式 (裁判事務手続講座)

 どこが間違いかというと、告訴の受理について。著者は、「告訴・告発の要件を満たしている場合に、司法警察員あるいは検察官が受理を拒絶することは許されないのが法の趣旨である。」といいながら、「しかし、告訴状や告発状の中には、(中略)その他の告訴の有効要件の記載を欠いているために、その点が補充されなければ有効な告訴または告発として扱えないものもある。」として捜査機関の対応に一定の理解を示すのですが、「有効要件の記載を欠いている」のであれば、そもそも、「告訴・告発の要件を満たしている」とは言えないですよね。要するに、要件が満たされていれば受理しなければならず、要件を欠いていれば受理しないでいい、というだけのことです。ところが実際には、要件が整っていても、「捜査するのが面倒くさい」、「人手が足りない」などという理由で、告訴状を受け取ってくれない警察も多いのです。そうした警察のおかしな対応については、きっちり批判してもらいたいところです。