なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 菅家さん釈放と裁判所の責任

 90年に栃木県足利市で当時4歳の女児が殺害された事件で、無期懲役が確定していた菅家利和さん(62)が4日、収監先の千葉刑務所から釈放された。

 女児の衣服に残った体液のDNA型が、菅家さんの型と不一致だったとする再鑑定結果を受け入れた東京高検が、刑の執行を停止する異例の措置を取ったため。菅家さんについては、再審が始まることが確定的となっている。

 菅家さんが釈放されたのは、00年の最高裁判決の確定以後9年ぶり。逮捕された91年12月以来、約17年半がたっている。

http://www.asahi.com/national/update/0604/TKY200906040199.html

 こういう出来事を見ていると、死刑と無期の埋めがたい差を痛感しますね。幼女(少女)を一人を殺害した事件では、奈良の小林薫は死刑が確定し、ペルー人の事件では一審の無期懲役の判決に検察が控訴しています。もし、菅家さんの事件で死刑判決が出ていたらと思うと、ぞっとします。
 さて、この足利事件では、再鑑定が可能な資料が残されていて、年々、鑑定の精度が上がっていくという状況にありました。そんな中で、弁護団は何度も再鑑定を求めてきたにもかかわらず、検察庁はおろか裁判所も、再鑑定を拒否してきました。普通に考えると、有罪(=DNAの一致)に自信があるなら、さっさと再鑑定を実施して、無駄な争いに終止符を打つべきです。にもかかわらず、裁判所はかたくなに再鑑定を拒否し、17年もの月日が経ってしまったものです。こうしてみると、警察や検察の責任は言うまでもないが、裁判所の責任も、それらと劣らない程度には存在しているというべきでしょう。こうやって菅家さんにえん罪を着せることに荷担することになった裁判官については、その氏名や現在の勤務裁判所を明らかにして欲しいものです。どこかのマスコミでそうやって取り上げてもらえないでしょうか。

(追記)
 再審請求を棄却したのは池本寿美子裁判官(裁判長)でしたね。
足利事件再審請求を棄却 - なるしす日記