なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その11)

 マンションの売買において、違約したときは売買代金の2割を支払うという条項が無効とされ、手付け金200万円の倍額の限度で効力を有するとされた事例。
 福岡高裁判決平成20.3.28判例時報2023号32頁
(コメント)
 マンションの購入希望者が200万円の手付け金を支払って、3640万円の売買契約を締結したところ、後日、夫の同意が得られないなどの理由で解約した。売買契約によれば、売り主または買い主が契約に違反したときは、売買代金の2割相当額の違約金を支払うという条項があった。原審の福岡地裁は、この条項を全部有効として、違約金を728万円と計算し、すでに支払い済みの200万円を控除した残金である528万円の支払いを買い主に命じた。
 本判決は、解約後にすぐに新しい買い手が見つかり、売り主の損害は軽微なものにとどまっているとして、上記違約金条項の一部を無効とし、手付け金と併せて400万円の限度で支払いを命じたもの。
 これまでは、ともすれば、上記のような違約金条項は、有効か無効化の二者択一的な議論がなされてきました。本判決は、「信義則」をキーワードに、業者側の請求の一部をカットしたもので、なかなか新鮮です。買い主サイドから見れば、手付け金を没収された上に、なお200万円も払うのはやや辛いところがありそうですが、現実的な解決としてはこのあたりが落としどころなのかもしれません。