なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その7)

宗教法人が死亡したペットの葬儀等を営む行為が法人税法の収益事業に該当するとされた事例。
最高裁平成20.9.12判例タイムズ1281号165頁
(コメント)
 この手の判例雑誌には、単に判例が紹介されているだけではなく、その判例に対する解説が付されています。この解説は、無署名なので誰が書いているかわかりませんが、一説には、裁判官が(アルバイトで?)書いているといわれています。今回は、この判例に付された解説が、いいところを突いていました。
 宗教法人側は、これまで、人の葬儀には課税されておらず、ペットの葬儀にだけ課税するのはおかしい、と主張していました。
 それについて、原審(名古屋高裁)は、人の葬儀は「お布施」という形で支払いがなされ、金額も定額ではなく、支払いは任意であること(それに対して本件のペット葬儀は一定額が決められている)。最高裁は、この原審の理由を微妙に変更して、「当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か」という基準を新たに持ち出しています。つまり、ペット葬儀は、他の事業者(たとえば倉庫業運送業、不動産業、石材業、動物病院など)も行っているから「収益事業」に該当するが、人の葬儀は宗教行為としてしか行われていないので、「収益事業」には該当しないと(暗に)判示しています。
 判例タイムズの解説によれば、こうした基準を最高裁が持ち出したのは、人の葬儀の「お布施」だって相場があるし、払う側もそうした相場を意識して半ば義務的に払っているのであり、僧侶もそれを期待しているから、「お布施」と「ペットの葬儀代金」との間に本質的な差異はない、と行っています。なかなかシュールで現実的なコメントであり、腑に落ちるところがありました。