なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

模擬裁判

 4日連続で模擬裁判をやっていました。実際にあった事件をアレンジした台本をもとに、弁護士、検察官、裁判官はほんもの、裁判員は市民から選んで模擬裁判を実施しました。事案は傷害致死。酔って記憶がない被告人が、友人のおなかを踏みつけて内臓を破裂させ、死に至らしめたという事実で起訴されたものです。
 かなり微妙で面白い台本だったのですが、2日間にわたる評議の末に出された結論は、「無罪」。終始、評議ではリーダー的に発言し、被告人に対する悪意を抱いて至るのではないかと思われた裁判員の一人が、「この被告人はおそらくやっている。でも、被告人が踏みつけたと断定するには証拠が足りない。くやしいが、『疑わしきは被告人の利益に』という法則がある。これがなければ有罪だと思うが、この原則に従う以上、無罪とするしかない」と言いだし、6人の裁判員がそろって無罪の結論を出しました。
 裁判官3名も、その後に裁判員から意見を聞かれ、歯切れ悪く「私も皆さんと同じ結論です」と言っていましたが、おそらく内心は違うのではないかと思いました。実際に職業裁判官だけで審理が行われていれば、おそらく、2対1で有罪になっていたものと思います。
 今回、裁判官は、評議のあいだ、「立証責任は検察官にある」とか、「有罪と確信できなければ無罪だ」といった説明をほとんどしていませんでした。それにもかかわらず、裁判員が、「疑わしきは被告人の利益に」という原則に忠実に判断をしたことに、ある種の感動さえ覚えました。
 今回は、模擬裁判と言うことで、評議の様子も実況中継され、ガラス張りの状態で行われました。本番では、こうは生きません。密室での評議になります。そのとき、こうした素直な市民感覚が尊重されるような評議がなされることを、心より期待しています。
 4日間、裁判所の法廷に入りっぱなしで、ほとんど仕事らしい仕事ができませんでした(^^;)。
 来週は遅れを取り戻すよう仕事に励まないと。