なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 東電OL事件の闇

 永島雪夫『午前0時の逃亡者』です。
 なぜかamazonでは取り扱いがありません。しかたがないので出版社からの直販で買いました。
http://www.liendejapon.com/
 これまで出された東電事件の本は、いわば犯人とされたゴビンダ氏を主役にして、彼の当日の行動がどのようなものであったか、彼を有罪とした判決にいかに矛盾が多いかを訴えるものが主流でした。
 しかし、この本では、そうしたゴビンダ氏サイドの事情はほとんど登場しません。著者は、被害者の死後に所在が不明となっていた定期入れが、現場の渋谷から遠く離れた巣鴨で見つかったことに着目し、当時、被害者と交流があった者の中から、巣鴨に接点のあった男をあぶりだします。そして、その男と直接に対決する・・・。そういう迫真のノンフィクションです。
 ストーリーには読みごたえがありますが、「遺留」を「慰留」とするなど誤植も目立ち、書籍としての完成度には疑問があります。ただ、そうした欠点を差し引いても、真相に迫ろうとする著者の姿勢には見るべき点が十分にあると言えるでしょう。
 惜しむらくは、ここまで書いているのだから、ゴビンダ弁護団へのインタビューなどもして欲しかったところ。ぼくの同期の弁護士がずっと彼の弁護を引き受けています。この本を読んで彼がどう思うか、ぜひ一度、聞いてみたいような気がします。