なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

徳島刑務所暴動事件はやはり松岡医師の問題か

 われわれにとっては大問題なので、ここは長くなりますが全文を引用します。

 十六日朝、徳島刑務所(徳島市入田町大久、荒島喜宣所長)内の工場で作業していた受刑者が集団で暴れ、複数の刑務官がけがをした騒動は、関係者の証言などから、刑務所内の医療面に対するうっせきした不満が要因となった可能性が高まっている。徳島弁護士会人権擁護委員会(大道晋委員長)が二〇〇四年四月以降に受理した受刑者からの人権救済申し立てのうち、医療関係の申し立ての件数が約45%の九十八件に上っている。

 〇四年四月から今年十一月十六日までに委員会が受理した受刑者からの人権救済申し立ては計二百十八件。このうち調査した医療関係の申し立ては、〇四年度二十件、〇五年度二十八件、〇六年度二十七件、〇七年度(十六日現在)二十三件の計九十八件に上っている。

 騒動に至る事態を受け、人権擁護委員会は十九日に検討委員会を設置し対応を協議している。申し立ての内容について大道委員長は「医療関係の申し立ては多いといえる。今回の騒動を受け、徳島弁護士会も対応を検討している」と事態を重視している。

 刑務所内の医療行為をめぐり、〇五年九月には四十代の受刑者が肛門(こうもん)に指を押し込まれたことによる業務上過失傷害罪で、昨年七月には三十代の受刑者が同行為による特別公務員暴行陵虐罪で刑務所の医務課長らを徳島地検に告訴。不起訴処分を受け徳島検察審査会に審査を申し立てたが、検察審査会は今年十月、「診療録に問題があったとの記載がなく、暴行や傷害を裏付ける客観的証拠がない」としていずれも不起訴相当と議決している。

 このほか、〇五年十月にも片頭痛や幻聴、不眠などの症状を訴えたにもかかわらず、適切な治療が施されなかったため体調が悪化したとして、受刑者が国と医務課長を相手取り徳島地裁に計二百万円の損害賠償を請求。昨年九月に請求が棄却されている。

 過去に徳島刑務所に収監されていた男性は「高血圧のため医務課に体調不良を訴えても、他覚症状がないとの理由で薬を処方してもらえず、日増しに悪化した。他の受刑者にも薬を処方せず、強く要求した受刑者は医務課長から暴行を受けたり、頭痛の訴えに対して肛門に指を入れられたりしていた」と証言。今回の騒動について「医療体制への怒りが根底にある。不当な医療行為を放置している刑務所に対し、処遇の改善を求め抗議しているのだと思う」と指摘する。

 医務課長の医療行為について、徳島刑務所の高橋広志総務部長は「高松矯正管区が調査したが、直腸検査は受刑者の同意のもと実施されており、医療行為は適正に行われているとの結論が出ている」と話している。

http://www.topics.or.jp/contents.html?m1=2&m2=&NB=CORENEWS&GI=Kennai&G=&ns=news_119561000985&v=&vm=1

 週刊現代の記事を待つまでもなく、徳島刑務所における松岡医師の暴虐ぶりは異常を窮めていました。徳島刑務所の刑事施設視察委員会(弁護士や医師など刑務所とは無関係の民間人で構成)は、今年の春、これまた異例なことに、松岡医師を名指しして問題を指摘していました。
 ところが、法務省は、上記の記事にあるように、「直腸検査は受刑者の同意のもと」という理由で、まったく問題視していません。頭痛を訴えている受刑者が直腸検査に同意するはずもなく、刑務所の言い分は破綻しています。
 この背景にあるのは、刑務所での医師不足。刑務所は受刑者ばかりで、予算的にも切り詰められ、最新の治療などが行える環境ではありません。そうなると、有能な医者が刑務所勤務などするはずもなく、刑務所にやってくるのは、大学病院などから命じられて一時の研修チックにやってくる若い医師か、世間で相手にされない変わり者のドクターか、そのどちらかになってしまいます。
 そんな医師でも、刑務所にとっては、来てくれるだけでありがたい神様のような存在。いくらひどい診察をしようとも、刑務所は組織をあげてかばってくれるわけです。
 そんな状況が続けば、暴動でも起こしたくなりますよね・・・。
 明日は、日弁連で、こうした問題も話し合ってきます。
(追記)
 「あわせて読みたい」になぜか載っている某弁護士の日記にも、この暴動事件のことが触れられています。しかし、その感想が「日本でも、処遇面での工夫、改善をさらに進めて行かないと、「騒ぎ」にとどまらず、暴動、それも大規模な、といった事態に発展しかねず、看過し難い不祥事と言っても過言ではないと思います。」というのは、かなりずれているのではないですかね。単なる騒擾や暴動ではないのですから。「不祥事」の原因が刑務所の医療問題にあるという本質を見失うべきではありません。