新書のねうち
- 作者: 武田徹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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さて、本書は、タイトルどおりNHKの問題に焦点を当てたものです。こうした現在進行形の問題については、ネットや雑誌の記事も多く、多くの人がそれなりの関心と問題意識を持っていると思われます。しかし、現代を生きるわれわれに欠けているのは、やはり歴史的な視点ではないでしょうか。たとえば、NHKという組織はどのようにして出来たのか、ラジオやテレビの始まりはどのようなものであったのか。こうした歴史的視点は、ネットサーフィンよりも、やはり一冊の本でじっくりと読むのが向いています。本書は、そうした歴史や議論を「上書き」=再検証していくことで、公共放送を標榜するNHKのあるべき未来像について語ってくれます。
このように、本書は、冒頭に触れたお手軽新書とは正反対の、教養としての新書の内容を保っており、読書の楽しみを教えてくれるものに仕上がっています。著者が語るNHKの未来像は、やや抽象的すぎる嫌いがあり、もっと具体的で目に見える姿を提示して欲しかった気もしますが、そこから先は読者が自分の頭で考えることなのかもしれません。
折しも、第2次安倍内閣が船出しました。安倍とNHKといえば、例の圧力問題をすぐに思い出します。もちろん、この本にもその分析は登場します。今一度、NHKについて考えてみる良い機会なのではないでしょうか。
そして、この本が、それを考える上でのよきハンドブックになってくれるものと思います。