なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

東京高裁は見苦しい

 オウム事件に関して、東京高裁が日弁連に弁護人2名の「処置請求」を求めていた事件について、日弁連は、両弁護人を処置しないという決定をしたようです。

オウム裁判:松本側弁護士を処分せず 高裁の請求に日弁連

松本死刑囚の弁護士2人に対する処分を決める「処置請求」について会見する杉崎茂・日弁連副会長と柳瀬康治・処置請求に関する調査委員会委員長(右)=東京・霞が関弁護士会館で15日午後5時14分、松田嘉徳撮影 控訴趣意書を期限までに提出せず、控訴を棄却され死刑が確定したオウム真理教アーレフに改称)の松本智津夫麻原彰晃)死刑囚(51)の弁護人2人について、東京高裁が日本弁護士連合会に処分を求めた「処置請求」で、日弁連は15日、処置(処分)しないとの決定を出した。日弁連は「裁判の終了後はそもそも処置請求できない」と判断し、弁護活動の是非には触れなかった。高裁は「判断を回避した」として決定に強く反発し、2人の所属弁護士会懲戒請求する方針を示した。
 高裁は、控訴審の弁護を担当した松下明夫(仙台弁護士会)▽松井武(第2東京弁護士会)両弁護人について「趣意書提出を違法に拒み、裁判の迅速な進行を妨げた」として、松本死刑囚の刑確定後の昨年9月、刑事訴訟規則に基づき処置請求していた。

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070216k0000m040106000c.html

 いわゆる門前払い的判断で、この程度の判断ならば、もっとさっさと出してほしかったという気がしますが、内容自体は評価してよいと思います。
 前にも書きましたが、この弁護人の訴訟戦術のおかげで、高裁はろくに(というか全く)審理もせずに訴訟を終えることができたわけです。ですから、裁判所の立場から見れば、弁護人は「裁判の迅速な進行を妨げた」ものではありません。これが、「被告人の利益を害した」などとして処置請求されたのならまだわかりますが、「訴訟の迅速な進行」は決して妨げられていないのですから。
 しかも、処置請求をするなら、訴訟の進行段階ですべきです。”迅速に進行させたいのに、それが弁護人のせいで妨害されている。だから弁護士会さん、何とかしてくださいよ”、というのが処置請求でしょう。それなのに、自分が勝手に、さっさと訴訟を終結させておいて、そのあとに「迅速な進行を妨げた」なんてことをわざわざいうなんて、それこそ開いた口がふさがりません。こんな不当ないいがかりを許しておく理由は全くありません。
 しかも、高裁は、この決定に「判断を回避した」として反発しているそうですよ。
 いつも、弁護人や被告人の必死の訴えに耳を貸さず、民事でも安易に時効完成を認めたり、憲法判断に踏み込まなかったり、それこそ日常茶飯事として「判断を回避」しているのは、あなたがた裁判所ではありませんか。自分たちは平気で判断を回避しておきながら、日弁連が門前払いを食らわすと途端に「判断回避だ」なんて怒り出すのは自己矛盾も甚だしいといわざるを得ません。こうなると、もう三流のお笑いネタかと思ってしまいますよ。
 こうした腐った裁判所の姿勢を目の当たりにすると、次善の策として、やはり裁判員制度の導入が不可避だと思いますね。

(処置請求が出された日の日記はこちら