なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 <ビラ配布>「住居侵入」否定し無罪 東京地裁

 東京都葛飾区のマンションに共産党のビラを配布するために侵入したとして、住居侵入罪に問われた僧侶、荒川庸生(ようせい)被告(58)に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。大島隆明裁判長は「ビラ配布の目的だけであれば、共有部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするとの社会通念は、いまだ確立していない」と指摘し、住居侵入罪の成立自体を否定した。
 公判で弁護側は「ビラ配布は政治的表現の自由の一つとして憲法で保障されている。玄関はオートロックではなく、ドアポストにビラを配布しただけで住居侵入罪は成立しない」と、無罪か公訴棄却を主張。検察側は「立ち入り拒否の張り紙が掲示されており『侵入』に当たることは明白。政治的意見の表明であっても、他人の権利を侵害することは許されない」と指摘していた。

 ぼくもマンションに住んでますので、わざわざドア前まできてビラを配るという行為は、不快に感じます。物騒だし。共産党というのもちょっとしつこそうで嫌悪感がないとはいえないし(^^;。
 ですが、そのことと、刑事罰を科していいかどうかはまた別問題だと思います。とくに、配ったものが政治ビラであったことや、共産党が曲がりなりにも国会に議席を有する政党であることからすると、そのビラを配る行為は、風俗のチラシとか、他人を誹謗中傷するようなビラを配る行為、オウム真理教が宣伝ビラを配る行為などとは、明確に区別されるべきではないかと思います。
 ただ、この判決のように、そもそもビラ配り自体が住居侵入罪を構成しない、と言い切っていいかどうかは問題があると思いますが、いずれにしても、こうした事件でわざわざ起訴までした検察官の姿勢こそが問われるべきだと思いますよ。