なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

破棄自判

 最高裁が上告審として審理した結果、原判決不適当だと考えた場合、原判決を破棄します。破棄した後、審理のやり直しを命じて高裁に差し戻すこともできますし、判決するのに資料が揃っていると考えれば、自判(自ら判決を言い渡すこと)もできます。前者の場合、破棄した際の最高裁の理由づけには、その事件に限り、拘束力があることになっています。高裁がまた同じ判断を繰り返さないようにするためです。
 今回、光市の母子殺害事件で、最高裁は、無期判決を破棄しながら、自判はしませんでした。
 その結果、ふたたび広島高裁で審理がやり直され、どういう結果になったとしても、上告がされるでしょう。なるほど、さらに長期間が必要になります。
 ただ、死刑の選択という究極の場面だけに、最高裁が差し戻し判決をしたこと自体、ぼくは評価します。弁護人も選任されたばかりですし。上記のように、今回の判断には拘束力があるので、高裁が同じ理由で無期判決を出すことはできません。おそらくは死刑判決になるのでしょう。そうであれば、なおのこと、手続きは慎重にしてしすぎることはないと思います。
 池田小事件の宅間は、あっと言う間に死刑になりました。しかし、それでは本人の思うつぼという見方もできます。光市の事件の被告人が死刑判決と向き合うことができるという意味でも、急いで判決、急いで執行という必要はないのではないでしょうか。