なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 刑務所内診療所の医師名不掲示、発覚1年後も改善せず(読売新聞)

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_05082506.htm
 消えてなくなりそうな貴重な記事なので、全文引用します。

 全国の刑務所内診療所で、医療法で義務づけられている医師名の掲示が行われていない問題は、発覚から1年以上過ぎたが、改善されていない。「掲示すれば、医師の確保が難しい」とする法務省に対し、厚生労働省は「刑務所だけを例外にできるのか」と疑問を呈し、協議が長引いているためだ。この問題を巡っては、服役経験のある福岡県内の男性が福岡刑務所医務部長を医療法違反で福岡地検に告発、今年3月、不起訴になった。男性は近く、福岡検察審査会に不服申し立てをする。

 医療法は、病院や診療所に医師名を掲示することを定めており、違反すれば20万円以下の罰金。刑務所の診療所も例外ではない。

 昨年4月、福岡刑務所(福岡県宇美町)で掲示していないことが発覚。その後の法務省の調査で、全国58刑務所すべてが不掲示と判明した。

 法務省厚労省に対し、「医師の身元が明らかになれば、診察に不満を持った受刑者によるトラブルが増える」と説明。黒柳誠法務専門官は「名前も知らない医師の診察を受けるのは不安という受刑者の気持ちもわかるが、刑務官も『お礼参り』を防ぐため名乗らない。医師だけが名乗るのはバランスを欠く」と話す。

 宮崎刑務所(宮崎市)は「ただでさえ医師の確保は難しい。民間医療機関との違いを理解してほしい」と訴える。

 選択肢は「法に基づき掲示する」か「法に例外規定を設ける」か、しかない。厚労省医政局総務課の野崎伸一企画法令係長は「『医師の恐怖感を取り除くため』という理由で例外にして、国民の合意が得られるか疑問」と言いながらも、「掲示すれば医師の危険は増すだろう。一筋縄ではいかない」と悩む。

 「代用監獄」の著書があり、刑務所事情に詳しい五十嵐二葉弁護士(東京)は「民間の医療機関なら、違反が明るみに出てから1年も放置を許されるはずがない。法務省が自ら違反状態を続けており、受刑者相手だから違反してもいいという意識が見える」と批判する。これに対し、南博方・一橋大名誉教授(行政法)は「刑務所の医師は定員を割っている。掲示すれば、さらになり手が減る。十分な医療ができなくなれば、結局は受刑者の不利益になる。例外規定を設け、掲示しなくて済むようにすべき」と話している。

 昨年10月に、この日記で紹介した記事(http://d.hatena.ne.jp/narushisu/20041004/p4このときは西日本新聞のもの)の続報です。コメントはのちほど。