なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

魚住昭「特捜検察の闇」文春文庫:

宮本雅史「歪んだ正義〜特捜検察の語られざる真相」情報センター出版局:歪んだ正義
 東京地検特捜部といえば、政治家などの巨悪に立ち向かっていく正義の味方、精鋭検事の集団というように思っておられる方も多いでしょう。ですが、昨日の日記で触れた三井環事件や、最近の日歯連事件(落選中の村岡さんだけが起訴。本人は否認しているのに逮捕もせず、在宅起訴。しかも橋本元首相などはおとがめなし)など、検察庁の最近の動向には、世論の納得が得られないものも少なくないのも事実です。
 なぜこのような事態が起きてしまうのかということを、過去に特捜部が取り扱ってきた事件を通して検証しようというのが、上記の2冊に共通する枠組みです。魚住さんの本では、元特捜部のヤメ検弁護士が逮捕された石橋産業事件、現役弁護士が逮捕された安田弁護士事件について、宮本さんの本は、東京佐川急便事件、ロッキード事件、造船疑獄事件を取り上げています。いずれも、事件の関係者に細かく取材するなどして組み立ててあり、とてもスリリングで刺激的な内容です。
 著者たちは法曹界の人間ではなく、ジャーナリストです。それだけに、法律論の部分では、法律家からみれば、誤解と取れる箇所もわずかにあります。ですが、そういう枝葉末節の部分を取り除いてみれば、まさに検察の闇の部分に光を当てているもので、一読をおすすめしたいと思います。
 2冊のうち、おすすめは前者。文庫で安いこと、文章が読みやすいこと、内容も分かりやすいことが理由です。