なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 分厚い書類に裁判員困惑…模擬裁判で課題浮き彫りに(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040518-00000506-yom-soci
裁判員の苦労がしのばれます。で、興味をひかれたのは次の箇所。

量刑については、「刑務所がどういう所か知らないので、意見を言いかねる」と発言した裁判員もいた。

 想定されている制度では、量刑も裁判員が参加して決めます。刑務所の実態を知らないと意見がいえないというのは、きわめて正論です。裁判官だって、実際のところは知らないでしょう。小職などは、その方面に関心を持って活動していますので、裁判官よりは実態を知っているつもりですが、受刑者になったことはないので、机上の知識の域を出ていません。
 裁判官をはじめ我々は、量刑相場というものから議論をはじめがちです。たとえば、「人をひとり殺した場合は懲役10年が普通。本件は、加害者にもちょっとかわいそうな点があるので8年にするか」とか。でも、裁判員の方々は、まず量刑相場を知らないし、刑務所がどういうところかもわからない。これでは、刑の長さを決めろといわれても、判断しかねるのはもっともだと思います。
 実際には、裁判官がリードして決めていくことになるのでしょうが、「刑務所の実態」の説明などは、誰がどのようにして行うのでしょうか。あるいは、もっと広く、国民全体に刑務所の実態を、誰がどのようにアピールしていくのかという点は、関係者に課せられた重い課題のひとつといえそうです。