なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 winny道具論への疑問

京セラ兄弟

 最近、違和感を感じる議論のひとつに、winny作者が逮捕された件で、開発者である47氏を逮捕するのはおかしい、というものがあります。論者は、その根拠として、「winnyは単なるツールであり、使いようによっては有用なものでもある。このツールを使って悪いことをしたものならともかく、中立なツールの開発者を摘発するのはおかしい」という点をあげています。そして、論者が持ち出すのが、「包丁のたとえ」です。包丁は、殺害用にも使えるが、基本的には料理用のツールである。包丁作成業者は、包丁で人が殺害されることを知っているが、それでも(幇助などの)罪に問われることはない、という考え方です。
 彼らが主張していることの多くは間違っていません。winnyが有用なツールとしての側面を持っていること、包丁のケースで製造者が罪に問われることはないことなど、いずれもそのとおりであり、ここに異論をさしはさむ余地はありません。
 ですが、winnyと包丁の違いは、第一に、開発の意図にあるでしょう。包丁は料理の道具として古くから用いられているもので、業者も料理用として開発していることは明らかです。この点がピストルや兵器などと根本的に違うところです。では、winnyはどうでしょうか。winny自体は、純粋なP2Pのソフトとしての内容しか有していません。ですが、開発の意図は、winMXの摘発に端を発し、その摘発を逃れるためであった見られます。ny開発の時点において、すでにMXによる違法ファイルの交換状態はピークに達していたもので、47氏は、nyが違法ファイル交換に使われることを当然に認識しながら、そのために開発をしたものと考えられます。2chのダウンロード板でユーザーとの調整をしながら開発を続けて行ったことも、開発の意図を推測させるひとつの材料になると思います。包丁製造業者は、殺人をしようとしている人から使用感を聞いたりはしません。
 第二に、実際の使用の実状があります。包丁は、いうまでもなく、ほとんどの場合、正しく料理用につかわれています。ですが、nyのネットワークで流れているもののほとんどは、違法なものです。作者として、そういう事実を知らなかったとは思えないので、もっぱら違法状態に利用されていることを知りつつ開発したといわれてもやむを得ないのではないでしょうか。
 そういう意味では、winnyの使い方を説明している雑誌や本なども、下手をすれば「幇助」の領域に近づいてきます。もちろん、nyのネットワークに違法アップロードを行うにあたり、ny自体は必要不可欠ですが、活用本は不可欠でも何でもありません。その意味で、仮に正犯者が活用本を見ていたという事実があったと仮定しても、その本の著者や出版社を幇助罪に問うことは難しいと思いますが。