なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 人質の責任と国家の責務

昨日の日記に、昨日旅人(id:kinoutobito)さんからコメントをいただきまして、さらに少し考えました。
まず確認しておきたいことは、人質たちが巻き込まれた誘拐・監禁、ついでにいえばわが国に対する脅迫行為というのも、まぎれもない重大犯罪だということです。自国民が、海外で犯罪の被害に巻き込まれ、国家が脅迫されるに至っている。そのような事態に追い込まれているときに、国家として自国民を救出するため手だてを尽くすというのは、国家の責務と考えられるのではないでしょうか。国家がなんのためにあるのか、という問いはなかなか深遠です。ですが、国家が国民を守るために存在しているのでなければ、一体、なんのために存在するというのでしょうか。
こう考えると、いかにイラクが戦闘地域であり、かれらがそれを承知で入国したとしても、犯罪の被害に巻き込まれ、殺害されるかもしれないという憂き目にあっている以上、国としては手をさしのべてやるのが当然だと思うのです。
また、そのように、手をさしのべてやるのが国家の責務だとすると、それに伴う費用についても、原則として国家が負担すべきではないでしょうか。国民が自国で犯罪に巻き込まれた場合には、当然ながら警察が出動しますが、狂言でない限り、警察の費用を請求されることはないでしょう。それと同じことではないですか。憲法が国民に海外渡航の自由を保障し、実際にグローバルに国民が活動している中で、イラクだから費用は出さない、反体制だから金を請求するというのでは、彼らを非国民として扱うことにほかならないのではないでしょうか。
余談ですが、第2次大戦終結するころ、中国残留孤児・残留婦人の問題が発生しました。これも、ある説によれば、ソ連が参戦してくることを知った政府が、軍部にのみ撤収を命じ、満州に居住していた国民にはこのことを告げなかったということが原因だといわれています。昔のことを引き合いに出すつもりもないですが、国家が国民を守る側に立たなくてどうするのか、という問題意識が私の中にちょっとあります。
長々と失礼しました。
(追記)12:10
id:Vins-Tさんから、コメント欄で貴重なご指摘をいただきましたので、若干追記します。
ご指摘のとおり、今回の費用については、厳密には「救出のための費用」そのものではない、と考えられますね。「海外で邦人保護のためにチャーター便を使った場合は、その空路の片道エコノミー運賃を請求すると外務省規定で決まっている」という点についても、不勉強で知りませんでした(大汗)。
そうだとすると、彼らがとくに他のケースと区別されているということではないのかもしれません。外務省としては、過去の実例などを踏まえ、平等に対応しているということなんでしょう。
それはそれで、外務省の立場としては理解できるのですが、与党議員の一部からも、それ以上の費用負担のコメントが出されているように、どうもこの問題は、まだ波及していきそうな気がしているのです。それにもまして、web上での議論や国内の世論というか、それらについても「もっと費用を負担させろ」という方向に向きつつあると思いました。それで上記のような文章を書いた次第です。