なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

靖国違憲判決を現職裁判官が批判 「週刊新潮」に投稿(毎日新聞)

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040415k0000m040091000c.html

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝を「違憲」と判断した福岡地裁判決(7日)について、井上薫横浜地裁判事(49)が、首都圏などで15日に発売される「週刊新潮」(4月22日号)に「裁判の中立性に疑問が呈され、偏向裁判との評価がなされる」などと批判する投稿をしていたことが分かった。現職裁判官が、確定前の判決批判を週刊誌で展開するのは極めて異例。

とまあ、これがフツーの判事さんだったら、ニュース価値も高いのでしょうけど、われわれ法曹界の人間にとって、井上薫さんといえば、ある種のため息まじりでないと語れないユーメイ人なわけで。独自の視点でユニークな裁判を連発し、法廷の内外で物議をかもしている裁判官のひとりなのです。
毎日新聞も、これだけではバランスが悪いと思ったのか、

 井上判事は86年任官。千葉、神戸地裁などの判事補や、前橋地家裁高崎支部などの判事を歴任した。同支部判事時代には、群馬県を相手取った民事訴訟の原告から「裁判長が弁論期日を一方的に決め、原告不在のまま判決を言い渡した」として提訴された。提出した答弁書の中で「因縁をつけて金をせびるような新手の法廷戦術」と反論したことが名誉棄損に当たるとして、前橋地裁は03年7月に20万円の支払いを命じた。2審では逆転勝訴した。

などと数多いエピソードの一端を披露してくれています。弁護士の中には、彼が転勤でやってこないように密かに祈っているものもいるとかいないとか。
ところで最高裁は、かつて、とある法案に反対する集会に出席し、「発言は辞退します」とだけ告げた裁判官に分限処分を行いました。これだけで処分の対象となるなら、この井上薫さんの行動も、問題になる余地が十分あると思いますけどね。
もっとも、小職としては、井上薫さんの例も含め、裁判官が発言することそれ自体は、もっと自由にしてよいとおもいます。井上薫さんの場合には、その基本的スタンスというか価値観が問題だと思います。