なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 「週刊文春」発売禁止命令の取り消し決定 東京高裁(朝日新聞)

http://www.asahi.com/national/update/0331/022.html

根本裁判長は「表現の自由は民主主義体制の存立と健全な発展のために必要な、憲法上最も尊重されなければならない権利だ」と前置きした。そのうえで、「出版物の事前差し止めは、この自由に対する重大な制約で、これを認めるには慎重な上にも慎重な対応が要求されるべきだ」と述べ、極めて例外的な場合でなければ差し止めは許されないとの判断を示した。また、表現の自由は「(送り手だけでなく)受け手(読者、視聴者)の側も含む」と指摘し、表現の自由を享受する側の権利であることも指摘した。

冷静な判断だと思います。プライバシーの問題は、ともすれば事後的規制では回復不可能だと考えられやすいですし、実際、事後に賠償を認めてもらっても、「知られたくないことを知られてしまった」という事実は元に戻らないわけで、事前措置が不可欠だと考えることも、一面ではもっともなことです。
ですが、「プライバシー」は世の中のすべての人にあるわけで、プライバシー侵害を理由に事前措置がバンバン認められるようになってしまうと、それこそ書きたいことを書けない、知りたいことが知り得ない、という世の中になってしまいかねません。以前、小職は、被害者救済の美名のもとに、表現行為に対する司法の判断がゆるゆるになっている、と指摘しましたが、今回の高裁決定は、その流れを食い止めようとするものの一つとして評価できるものと思っています。
ただ、この問題を報じるマスコミ側は、いわば文春と同じ穴のむじなですので、この裁判が出たことではしゃいでいるのは、やや見苦しい感じがします。そもそもは、マスコミというかメディア側の慎重な配慮がなければ、司法の規制を招くだけです。そのことを踏まえ、文春も落ち着いた対応をして欲しいものです(たとえば、次号で問題の記事をそのまま掲載するなどの行動は慎んで欲しい)。