なるしすのブログ

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 生命保険金、契約の免責期間過ぎれば支払い義務 最高裁判断(毎日新聞)

 同小法廷は「免責特約は、1年以内の自殺ならば動機や目的を考慮せず支払いを免れる半面、それ以降は犯罪行為など特段の事情がない限り、保険金取得が動機であっても、支払い義務があると解釈すべきだ」との初判断を示した。そのうえで「今回の自殺に犯罪の介在はうかがえず、特約の存在によって商法680条は適用されない」と指摘し、特段の事情の有無などについて高裁での審理を求めた。

商法680条というのは、「被保険者カ自殺、決闘其他ノ犯罪又ハ死刑ノ執行ニ因リテ死亡シタルトキ」には保険会社は責任を負わない、という規定です。だったら、そのとおりに運用すればいいと思うのですが、保険会社は、約款を作り、その中で、「契約後1年内の自殺に対しては、保険金を支払いませんよ」みたいな条文を置いていたのです。
このようないきさつから、これまでは、商法の一般原則を約款で変更したもの、と解釈し、もっぱら約款に従い、契約後1年内の自殺ならば保険金を払わないが、1年たった後に自殺した場合には保険金を出します、という運用をしていました。
ところが、次第に保険制度が悪用されるようになり、多額の保険金をかけて自殺に見せかけたり、あるいは本当に自殺なんだけれども、数億円とかそれ以上の保険を何社にもかけ、ほとんど計画的に保険締結→自殺というコースをとる人などが増えてきました。もちろん、高額の保険は保険料も高いのですが、1年と1ヶ月分だけ保険料を支払って自殺されたのでは、保険会社もたまったものではありません。そこで、保険会社サイドでは、「当初から自殺し、保険金を取得する目的で契約をした場合には、その契約は無効だ」という理屈を編み出しました。その理由付けのひとつとして商法680条が持ち出されるようになったのです。
今回、最高裁は、もともとの運用どおり、自殺を念頭に置いて高額の契約を締結した場合でも、保険会社は約款に拘束され、契約から1年後の自殺であれば、保険金を払うべきだ」と判示しました。保険会社には気の毒ですが、そういう約款で客を集めた(1年後の自殺なら保険金が出ると思って契約している人はたくさんいるはずです)以上、それに拘束されるというのは仕方がないような感じがします。