なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

裁判所の緩い判断

別に上記の事件がそうだというわけではありませんが、最近、裁判所の議論の仕方が、どんどん緩くなっているような気がしてなりません。もちろん、緩い判断を助長しているのは、われわれ代理人を務める弁護士の責任もあると思うので、もう少し自戒しながら事件処理をしなければならないと思うわけです。
「緩い」というのは、従来は、厳格な要件のもとに認められていたはずの行為が、要件を緩和する形で運用されているのではないか、という意味です。もちろん、裁判所は、最高裁判例がある以上、正面切って、「本件は例外で、緩くてもいいんですよ」とはいいません。外見上は、最高裁判例に従って厳格な判断を行ったように見せかけながら、その中身の議論はすかすかで、結果としてゆるゆるになっている、ということです。
前に書いた、名誉毀損をめぐる司法の動きもその一つです。今や、簡単に掲示板のアクセスログなどの開示が命じられます。また、捜査段階においても、以前は、「通信の秘密があるので令状を持ってこい」といって断っていたもプロバイダや掲示板の管理人が、簡単に令状がでるようになったことの反作用からか、令状なしでも(単なる捜査関係事項照会書というような警察のお願い文書だけで)、個人の記録を開示するような雰囲気になってきました。
以前、我が国の司法は、良くも悪くも「精密司法」と呼ばれ、裁判所はきっちりした議論を好む場所でありました。それが、徐々にゆるゆる司法になり、被害者救済の美名のもとに何でもオッケーという情勢になりつつあることに、ちょっとした憂いを感じるこのごろです。