なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

 裁判と電子データ

今や裁判所に出す書面も、裁判所が作る書面も、ほとんどすべてがパソコンによって作られています。訴訟の書面も、裁判所の窓口に直接出さなければならないものもありますが、ファクスでやりとりできる場面が増えてきて、楽になってきています。
ところで、裁判所に書面を出した際、裁判官から、「フロッピーでもください」などといわれることが多くあります。裁判官は、判決書に、当事者の主張のまとめのようなものを書かなければならないので、フロッピーで渡されたデータを適当にコピー&ペースとして、加工しようという考えなのでしょう。このたび、最高裁規則が改正され、規則上も、裁判官に提出を求める権限が正式に与えられることになりました。
ですが、このコピペで作られた判決には、ろくなものがないというのが率直な印象です。先日、小職が経験した事件では、判決書が100頁くらいありました。「これは裁判所も気合いを入れて判決を書いてくれたなあ」と感心しながら頁をめくってみると、その9割までが「当事者の主張」。「裁判所の判断」はおしまいの10頁程度で、その中身も、お粗末きわまりない手抜き判決。依頼人と相談し、即刻控訴しました。
このようなくだらない判決なので、高裁では判決を引用して徹底的に批判してやろうと思い、裁判所に「判決をフロッピーでくれ」と言いましたが、あっさり拒絶。自分はフロッピーを出せといい好き放題にコピペしておいて、判決は電子データでは渡さないというのでは、裁判所の身勝手にもほどがあるといえるのではないでしょうか。
裁判所は、コピペですむと思ったら、満足に書面を読みはしません。読書感想文を誰かのコピペで作れるとしたら、だれが課題図書をまじめに読むでしょうか。これと同じです。裁判所は、みずから書面を読み、証拠に当たり、キーボードのキーをたたきながら、判決の筋を考え、当事者を説得するべきで、安易にコピペしようとするその根性は許し難いものがあります。
それを最高裁規則で制度化しようと言うのは、裁判所の思考停止以外の何者でもないと私は考えます。