なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

「息子の交通事故死なぜ」判決確定後に両親“再提訴”

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031118-00000304-yom-soci
 民事訴訟で原告と被告の言い分が異なることはよくある。たとえば、「金を貸した」、「借りたのではなくもらったのだ」とか(貸金訴訟)、「夫が浮気した」、「浮気ではなく相談相手」とか(離婚訴訟)、「土地の境界はここ」、「いやあそこ」(境界確認訴訟)など枚挙に暇がない。むしろ、このように言い分が異なるからこそ裁判になるのだ。したがって、極論をすれば、民事訴訟の当事者は、たいていの場合、どちらかが嘘をついている(あるいは双方が嘘をついている)ことになる。嘘をついているかどうかは、本人と神様しか知りようがない。
 裁判官は、当事者の証言だけではなく、客観的な記録などの証拠から、その嘘を見抜くことが求められているのだが、これがうまくいくとは限らない。当事者らが文書を偽造することなどもあるし、裁判官も当然ながらだまされることもある。
 この記事によれば、両親は、息子が交通事故死した原因を知りたいとして、「裁判で嘘をついた」という事故の相手を再度、訴えたという。気持ちはわかる。しかし、そのことはすでに前の裁判で決着がついていることである。裁判所が認定した事実が、裁判上での真実である。裁判で明らかになるものは、それ以上でも以下でもない。裁判上での真実が、実際の真実と異なることはよくあることで、それを受け入れなければ裁判制度は成り立たない。
 そのことを両親の代理人の弁護士は、両親に説明しきれていないのではないか。