なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

現行案を作ったのは誰だ

 鳩山首相普天間の移転問題で窮地に立たされているように見える。鳩山首相が選択した案というのが、結局、自民党時代に日米合意された現行案と変わらないというのがその理由だという。
 しかし、現行案そのものを作ったのは鳩山首相ではない。自民党と合衆国が沖縄の県民の意見も全く無視して作ったのが現行案だ。鳩山案が現行案と変わらないとすれば、現行案を作ったほうにこそ、その批判は向けられるべきだ。自民党の谷垣総裁などは、「こうなった以上、信を問うべきだ」とか言っているけど、もうワケがわからない。自民党が現行案を作る際に、国民の信を問うことをしたのか。そもそも、安倍→福田→麻生と、国民の信を問うことなく、政権を放り出したりたらい回ししたり、好き勝手やってきたのが自民党ではなかったか。その延長線上に今回の鳩山案があるのであれば、まさに問われるべきは自民党の責任のはず。谷垣総裁もどのつらさげて「信を問え」なんていうのだろうか。
 とはいえ、鳩山総理のやり方もちょっとまずかったのではないか。今回は、もともとおかしな現行案が先にあったのだし、政権をとってわずか1年足らずで、日米関係の根本に関わるような基地問題が解決されるなんて期待を持つこと自体が間違っている。そうであれば、鳩山首相はもっと開き直っていい。八方美人的に、「最低でも県外」とか「5月末に決着」なんてことを軽々に言うから、過度の期待を抱かせてしまうのだ。もちろん、そうした期待こそ勘違いというか無理難題なわけだけど、そうした期待を持たせるような発言をし続けたのは、鳩山首相自身なのだ。この問題でいちいち辞任するには及ばないにしても(そんなことで辞任していたら、結局、基地問題について「公約」をしようなんて政治家や政党はなくなってしまう)、発言をしたこと自体については、きちんと謝罪すべきだ。仲井真知事の前で頭をさげるだけではなく、もっと沖縄県民の前に出る方法で。
 そして、鳩山首相民主党が、自民党時代のただれた日米関係から本気で離脱しようとするのであれば、もっとグランドデザインを描いたほうがいい。これから10年や20年の単位で、日米関係をどのように変えていこうとするのか、そうした大きな流れの中に、基地問題も位置づけていき、長期的な視野で基地の配分について論じ、自治体を説得し、合衆国を変えさせていくのが政治の役割なのではないだろうか。
 「政治は世論調査ではない。世論に従うなら政治はいらない」的なことを行ったのは亀井静香だった。普天間の移転問題についても、そのことは当てはまる。世論をリードしていく大胆さと緻密さこそが政治に求められている。鳩山首相がその役割を担うのにふさわしいかどうか、疑問は少なくないにしても、自民党の腐った体質から抜け出すために、避けては通れない道なのではないだろうか。