なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

悩ましい債権法の大改正

 民法の中で債権法と呼ばれる分野の大改正の作業が進められています。政権交代があったので、議論のペースは落ちるかもしれないし、逆に加速度がついてしまうかもしれません。
 いずれにしても、コペルニクス的転回が生じるかもしれないとあって、弁護士業界では戦々恐々としています。これまでの常識が全く通じなくなるわけですから、若手も中堅もベテランも、目の色を変えずにはおられないわけです。
 ということで、ぼくも連休中に少しだけ改正作業のお勉強でもしてみようかと。
 幸い、日弁連が出している月刊誌「自由と正義」の今月の特集はこの債権法改正問題です。これから2年程度は、債権法改正の議論で埋め尽くされるのかもしれません。
 さて、今日読んだ、自由と正義の論文のうち、気になったのは消費者契約法のゆくえについて。消費者契約法という、これまで特殊な扱いだった法律を、民法の中に取り込んでいくのかどうするのか。そういう基本的な方向性からして、すでに多種多様な議論が行われています。
 ぼくとしては、是非、民法の中に消費者契約法の精神を盛り込んでいってほしいと考えます。今までの民法は、対等な立場にある市民の契約関係を規律するものでした。しかし、現在の契約のほとんどすべては、消費者が主体となっているものです。そうであれば、民法の中に消費者契約法の精神を入れ込んでしまい、事業者対事業者という契約のほうを、特殊化して民法の片隅に追いやるとか、そうした工夫が必要なのではないかと思いました。何よりも、今の裁判官は、消費者契約法を知らなすぎます。民法の中に盛り込んでしまえば、これから民法を学ぶ人はもちろん、裁判官も弁護士も、みんなが消費者契約というものに思いをいたさずにはおられなくなります。そうやっていけば、やがて「消費者契約法の精神」なんてことを声高に叫ばずとも、自然に消費者保護の考え方ができるようになっていくのではないでしょうか。