なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その6)

 勤務終了後、社内における飲酒を伴う会合に出席して、帰宅途中に地下鉄の階段から転落して死亡した事故について、労災(通勤災害)にはあたらないとされた事例。
 東京高裁平成20.6.25判例時報2019号122頁
(コメント)
 労災に該当するとした原判決を破棄しています。
 本判決は、本件会合への出席は業務であると認めつつ、業務性を有するのは午後7時ころまでで、以後、3時間にわたってなおも飲酒や居眠りをしていたのは業務外の行為であるとしています。そして、階段から落ちたのは酩酊状態であったことが影響しているとして、通常の通勤災害には該当しないと判断しました。
 しかし、飲み会の中には、帰りたくても帰れないようなものも多く、この判決が言うように、午後7時ころまでが業務性を有し、以後は有していないと割り切れるものなのか、やや疑問もあります。もちろん、この裁判例は本件の会合に関する事例判断であり、社内の飲み会一般について判断したものではありませんが。
 個人的には、通勤災害の範囲については、なるべく広くとらえるのがいいのではないかと考えていますが、そうした見地からすれば、いささか厳しすぎるように思います。