なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

今日の裁判例(その4)

 その昔、裁判官から、「判例」と呼んでいいのは最高裁が出したものだけ。下級審のものは「裁判例」と呼ぶべきだと教えられました。法学部以外の人には理解できないであろう禅問答ですが、言われてみればそのとおりなんです。
 ということで、今日は正真正銘の「判例」で。

 医療法に基づく病院開設許可の取り消し訴訟において、開設値の付近において医療施設を開設している医師、医療法人、医師会には取り消し訴訟の原告適格がないとされた事例(最高裁平成19.10.19判例タイムズ1259号197頁)。
(コメント)
 いわゆる競業関係にある既存事業者が、他の事業者の開設許可を争えるのかという問題。過去、いろんな分野での判例があり、質屋や幼稚園の事例では原告適格が否定されたが、公衆浴場やたばこ小売り事業者のケースでは肯定されている。こうした違いがどこから出てくるのかは、興味深い。理論的には、法律の目的や条文の規定の仕方で決まるということになるのだけれども、立法者がどこまで考えて法律を作っているのかはよくわからないところがあるし、今のようなおかしな政治家ばかりの現状では、立法者の意思や法律の構造をたぐっていっても、それで合理的な結論が導かれるとは思えないところがあります。
 それはともかく、医療法は、意思の既得権を守るための法律ではないということは確かなようで、原告適格が否定されたのも、当然といえば当然の判決かと。