なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

新しくできる刑務所を子連れで見学


大きな地図で見る
 島根県の中央部に新しく刑務所ができます。今年の10月から受刑者が入ってくるということで、地元の人を対象にした見学会が開かれたので、ちょっと潜入してきました。カメラやケータイの持ち込みが禁止されたので、あいにく写真はありません。
 新しい刑務所は、いわゆるPFIで作られたもので、民間のノウハウが活用されています。美祢にできたものと同じ方式です。そのため、美祢ととてもよく似た構造になっていて、美祢を見学したことがあるぼくにとっては、それほど新鮮には感じませんでした。
 特徴としては、

  • 周囲を覆う厚いコンクリートの壁がない。透けて見えるようなフェンスが2重にあるだけ。周囲への圧迫感が少なく、学校の建物のようです。もちろん、フェンスの周囲は電波や赤外線でガードされていて、脱走や外部からの侵入はできないようになっています。
  • 眼科の診療所があり、一般の市民が通えるようになっている。月に1回しか眼科医はこないようですが、それでも周囲に眼科がない地元の人には嬉しいサービスかもしれません。もちろん、受刑者が受ける診察室とは別になっているので、受刑者と接触することはありません。
  • 面会室は普通の構造のものがたくさん。ただし、家族面会室といって、衝立なしに普通の部屋で手に手をとって面会できるスペースがあります。
  • 居室はすべて単独室。1畳ちょっとのスペースに机、ベッド、テレビ、洗面所、トイレがあります。
  • 居室の外はリビング状になっています。自由時間にはそこに出てきて寛ぐのもよし、部屋で自分のしたいことをしてもよいという子とになっています。

 このように、従来の刑務所のイメージ(いわゆる雑居房で畳の汚い部屋)からは掛け離れていて、ちょっとした下宿部屋のような感じがします。もちろん、こうした刑務所は例外中の例外であり、いわゆるスーパーA級という受刑者しか入れません。初犯で刑期が短く、身元がしっかりしたような人たちです。名称も「刑務所」ではなく「社会復帰促進センター」といいますが、まさにそうした名前にぴったりの場所です。
 連れていった娘も驚いていたようですが、勘違いしてもらっては困るのは、こうした例外的な場所が普通だと思ってしまうこと。こうした刑務所にはいれない95パーセントもの受刑者は、旧態以前とした刑務所で処遇されています。もともと立ち直る見込みの高いスーパーA級を厚く処遇するのは、それはそれで意義深いことです。ですが、その可能性が低いB級受刑者(何度も刑務所に出入りする人たち)をどうやって処遇していくのか、先進的な刑務所で得たノウハウをどうやってB級やL級(刑期が長い人)の受刑者に当てはめていくのか、まさにその先が問われています。
 刑務所が、受刑者をまっとうな人間にして社会に返すというものであるとすれば、BやLの人たちにこそ、これまでどおりの処遇を繰り返すのではなく、新しい試みをしてみるべきです。そうでなければ、また彼らは戻ってくることになるのですから。
 そうした意味で、全国にこうした社会復帰促進センターが作られていくことを期待しています。