なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

鬼追元会長の懲戒はやむを得ない

 日本弁護士連合会元会長の鬼追明夫弁護士(74)が整理回収機構(RCC)社長当時、RCCの債務者だった不動産会社から月10万円の法律顧問料を受け取り、大阪弁護士会懲戒請求されていた問題で、同会は16日、弁護士職務基本規程などに違反するとして、戒告の懲戒処分とした。

 日弁連元会長が所属弁護士会から懲戒処分を受けるのは初めて。鬼追弁護士は「RCCに関連する事項は除外することを伝えた上で顧問契約し、可能な限り配慮した。処分を受けるような行為は一切なく、日弁連への不服申し立ても検討したい」としている。

 同会などによると、鬼追弁護士は平成5年9月から大阪府枚方市の不動産会社と法律顧問契約を結び、契約を打ち切った昨年まで月10万円の顧問料を受領。この期間中の11年8月〜16年3月はRCCの社長を務めていた。

 同会は、RCC社長と顧問の兼務は必ずしも懲戒理由にあたらないと判断。その上で、同社の社長が15年末、RCCの債権回収方法などをめぐって鬼追弁護士に苦情を訴え、同社とRCCが対立関係になった点を重視し、それ以降も鬼追弁護士が同社顧問を継続していた点を「弁護士の品位を失う非行に該当する」と結論づけた。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080916/crm0809162232038-n1.htm

 鬼追さんは整理回収機構の社長として、文字どおり会社の経営に直接携わり、会社の意思決定を行う立場にあったものです。この記事を読むと、RCCの仕事をするようになるのが先で、不動産会社と顧問契約をしたのが後のようです。鬼追さんは、「整理回収機構に関することは除外して顧問契約をした」と言っていますが、そもそも借金をどのように返済するかは、会社の存立にかかわることで、これを抜きにして顧問を務めることができるかどうかは疑問です。会社というのは、常に金が回るかということを考えて経営しているわけで、RCCの話だけ聞かないというのは難しそうです。また、債務者のほうも、鬼追さんが整理回収機構の偉い人であったからこそ、顧問料を払っていた可能性もあるわけです。実際にも、この債務者会社は、鬼追さんに整理回収機構の件も相談しているんだし。
 鬼追さんは、あくまでも自分の行動は懲戒問題を生じない程度のものだと思っているようですが、会長や公的なサービサーの社長という重責を担うものとしてはあまりにも軽率な行動であることは確かであり、そうした軽率な行動によって、弁護士全体の品位や整理回収機構の業務の公正性にまで疑いを生じさせてしまったわけで、その罪は決して軽視できないものと思います。
 前から書いていることですが、弁護士の懲戒制度というものは、弁護士自治の根幹をなすものであり、厳しめに運用することが大切だと感じています。今回も、実際には、RCCと不動産会社のどちらかの利益が害された事実はないのでしょうが、大事なことは、「公正らしさ」ということです。公正らしさを失ってしまえば、弁護士の社会的信用というものはなくなっていきます。
 鬼追さんは日弁連に不服申し立てをするとか言っているようですが、そうした行動は感心しませんね。