なるしすのブログ

地方の弁護士の日常を,あれこれと書くつもりのブログです。

反貧困〜私たちにできること


 弁護士会のシンポジウムに参加しました。555人入る大ホールを借りていて、半分も埋まればいいかと思っていましたが、最終的には立ち見も出るほどの大盛況でした。中心的に準備に奔走した弁護士さん、それをサポートした多数の弁護士のパワーにまずは感激。弁護士も人数が増えてきて、弁護士会としてのまとまりやイベントに参加しない人も増えてきた中、こうした行事を通じてつながっていくことの大切さに、今さらながら気づかされました。
 さて、シンポジウムではまずは地元の法科大学院の労働法・社会保障法の緒方桂子先生による報告がありました。「緒方さん」といえば、緒方貞子さんを連想してしまい、つい、ベテランのおばあさんっぽい先入観がありましたが、実際にお会いしてみると、若くて新進気鋭の先生でした。おいら、インテリの女性に弱いんですよね。話し方がたいへん上品でお話も上手。われわれ実務家とは違い、研究者ならではの理想やピュアな感性を大切にしてお仕事をされている様子に触れられ、ちょっと羨ましくなりました。弁護士なんて、「依頼者の利益」という命題が常にあるので、理想や理念も横に置いて仕事をしなければならないこともしばしばですから・・・。
 緒方先生のお話で印象に残っているのは、「人が人を雇って仕事をさせる以上、それは直接雇用が原則であり、間接雇用(労働者派遣のような形態)は基本的に認めるべきではない」というところ。現在の労働環境では、そうしたねじれ現象がまかり通っていて、それがいろんなトラブルや貧困の原因の一つになっているのではないかということです。
 (緒方先生のご経歴などはこちらで→http://www.hiroshima-u.ac.jp/lawschool/H20kyoin/staff12/index.html
 そしてメインは湯浅誠さんの講演。湯浅さんは、一見すると、その辺にいそうな若者チックな風貌と軽い弁舌。ですが話し始めるとしっかりと本質をとらえたうえで、それを自分自身の言葉で力強い説明ができる人でした。著作はすでに拝読していましたが、実際にお話を聞いたほうがわかりやすく、聴衆にもパワーを与えてくれるお話でした。現在の社会は、野球のボールを握りつぶしたような形(大リーグホールの魔球のような形)になっていて、勝ち組の浮遊層と負け組の貧困層に2極分化し、中間層がどんどん先細りしている状況だ、ということ。貧困問題は、一握りの貧困者だけの問題ではなく、社会全体の問題であること、その解決のために従来の関係を超えた広い連帯が必要であるといったメッセージを届けてくださいました。
 取り急ぎ、以前も紹介した下記の書籍を一読されることをおすすめします。
 現在も進行中の格差社会、貧困社会ですが、少しずつ状況は変化しつつあるようです。そのために弁護士や弁護士会も力を尽くしたいと思います。

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)